東京BLOG

生命科学の研究者のブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

STAP細胞を信じない5つの理由

今日4月14日、理研ユニットリーダーの小保方晴子氏が弁護士を通じて「4月9日の記者会見に関する補充説明」と題する文書を発表した。

4月9日の記者会見に関する補充説明・全文

僕はこの文書を読んで、少なからず違和感を覚えた。小保方氏はどうやら降りかかる疑惑に対して徹底抗戦するようだ。彼女にはそうする権利があるので、それを批判するつもりはない。違和感はおそらく、4月9日の記者会見以降この問題が完全に科学の議論から離れて当事者の地位と名誉を守るための法廷問題になっていることから来るものだろう。

小保方氏がいくら声高に「STAP細胞はある。200回以上成功した。」と主張しても、彼女はそれらに生じている疑惑に対して何ら科学的な説明や証拠を示していない。科学的な説明や証拠となるデータを示せないのなら、これはもうただの喧嘩で、科学ではない。それでいて今日の文書による補足の「言い訳」発表を行うとは、彼女の科学者としての誠意はどこにあるのか。

このブログではあくまで科学の議論を行いたい。過去の投稿を読んでいただければわかるが、僕は当初STAP細胞は本当なんだと信じ切っていた。しかし、様々な事実が明らかになった現在、STAP細胞は存在しないと思っている。以下に僕がSTAP現象を信じない理由を記す。これらの疑問は多くの研究者が同じように感じていると思っている。



1.未だに「STAP現象」を再現できた研究者がいない
STAP論文の発表は1月29日だ。発表から2ヵ月以上経った今でも、誰も「STAP現象」の再現に成功したとの報告をしない。逆に、再現実験を試みたが失敗したとの報告はたくさんある。例えばDr. Knoepflerによる追試報告サイト。これまでに11件の報告があり、STAP現象を再現した報告は無い。また、Nature News独自の取材により、世界の有名な10ヶ所の幹細胞研究室で再現が取れないことが分かっている。他にもResearchGateボストングローブの記事にも追試失敗が報告されている。一部で酸等のストレス処理後にOct4の発現上昇を確認したとの報告があるが、Oct4の発現だけではSTAP現象を再現したとは言えない。STAPは日本語にすると「刺激惹起性多能性獲得」だ。Oct4の発現だけではその細胞が多能性を持つことを証明したことにはならない。

当初理研のプレスリリースでは、STAP細胞はiPS細胞よりも簡単に作製できると謳っていた。本当にiPS細胞より簡単に作製できるなら、現在iPS細胞を使って実験している多くの研究者は喜んで簡単な方に切り替えるだろう。だから、上に明らかになっているよりもはるかに多くの研究者がSTAPの方法を試したはずだ。にもかかわらず、未だに誰も成功したと声を上げない。これはSTAP細胞が存在しないからに他ならないのでは?


2.詳細なプロトコール発表後も実験が再現されない
2月の中旬以降、インターネット上で追試失敗の報告が相次いだとき、理研は「STAP細胞作製にはコツが必要」と主張し、そのコツを共有するために3月5日に詳細版のプロトコールを発表した。さらにハーバード大のバカンティグループも独自のプロトコールを発表した。これらの新しいプロトコールも世界の研究室で試されているであろうことは、ResearchGateボストングローブの記事からも見て取れる。

それにも関わらず、誰も成功しない。詳細版のプロトコールにコツが載っているのではなかったのか。それでいて、今日発表された文書では、STAP細胞作製にはさらにコツがあり、それは特許の関係で公表できないなどと言っている。科学論文では、それを読んだ第3者が実験を再現できるように記述することは誰もが知っているルールだ。しかも、STAP現象に関してはすでに国際特許が出願済みであり、特許の関係でプロトコールが公表できないという言い訳は通用しない。一体どのプロトコールで再現できるのか。




3.STAP論文の著者らは自家蛍光を区別できていないのではないか
Dr. Knoepflerのブログ追試報告サイトで度々あった報告として、酸処理後の細胞が発した光は自家蛍光であったという報告がある。

自家蛍光とは何かを少し解説すると、目的の蛍光分子に依存しないような蛍光のことだ。STAP論文で著者らは「Oct4-GFPマウス」という遺伝子改変マウスを使っている。このマウスの細胞においては、Oct4遺伝子が発現されると同時にGFPが出るようになっている。著者らはこのGFPのシグナルを頼りにSTAP細胞の判定をしている。しかし、細胞は様々な条件下でGFPの有り無しに関わらず蛍光を発することがある。このようなGFP等の蛍光分子によらず細胞が自動的に発する蛍光を自家蛍光と言う。

自家蛍光は実験結果を誤って解釈する原因になることがよくある。そのため特に今回のような微妙な結果の解釈の時は、論文において「このシグナルは自家蛍光ではない」と分かるようなデータの提示をする。その提示の方法はいくつかあるが、代表的なものは以下のようなものだ。Dr. KnoepflerブログにおけるJun Seita氏のゲストポストも参考になる。

・Oct4-GFPの改変遺伝子を持ってない野生型のマウスの細胞を全く同じプロトコールで調整し、両者を比べることでOct4-GFP遺伝子特異的なシグナルであることを示す

・蛍光顕微鏡なら、緑のチャネルだけでなく赤のチャネルの画像も同時に提示し、緑のチャネル特異的なシグナルであることを示す。(自家蛍光は緑から赤にかけて広範な蛍光スペクトルを取ることが多い。関学の関先生の例が分かりやすい。)

・フローサイトメトリーなら、GFPのチャネルと同時にPEのチャネルのパラメータで縦横に展開してプロットを示し、対角線に生じる自家蛍光群に対してGFP側にシグナルが出ることを示す。(追試報告サイトの"Sasha wrote on 2/12/14"に出ているデータの出し方がまさにそう)

5・6年前とかの論文でも、明らかに自家蛍光と思われるデータによって書かれている論文はよく見かける。最近発表される論文でも稀に見るが、さすがに蛍光を用いた実験に経験値が積まれているのか少なくなっている印象だ。それは上記のようなノウハウが広く共有されつつあるからだろう。しかし、キメラマウスに関するもの以外のほとんどのデータが小保方氏によって取得されたというSTAP論文は、普通のNature論文ではまず見られないミスが数多くある。竹市センター長が「小保方氏は未熟な研究者」と会見で言ったが、果たして上記のような実験のノウハウを含めた教育を小保方氏はきちんと受けてきているのだろうか。

例えばLetterのExtended Data Figure 5gでは、コンペンセーションというフローサイトメトリーで最も基本的な処理が行われずにデータが提示されている。このような未処理画像を論文に載せる小保方さんに「自家蛍光かどうかを見分ける」という発想がそもそもあったのかというのは大きな疑問だ。なぜならそういう発想があれば上に書いたような方法でデータの提示をするから。4月9日の会見で小保方さんは「これらが自家蛍光ではないということも確認していて・・」と言い切ったが、いったいどのような方法で確認していたのか。既に論文に発表した生データは公表しても差し支えないだろうから、ぜひとも生データを公開していただきたい。





4.緑色に光った細胞は死んだ細胞ではないのか
上の主張と関係するのだが、ある種の死んだ細胞は自家蛍光を発することがある。ここで著者らによって公開された細胞がリアルタイムで緑色の蛍光を発する動画を見てみよう。



良く見ると矢印で示された細胞が緑色の光を発する前に、綺麗な円形だったのが収縮していびつな形になり、同時に細胞の内容物のようなものが噴出しているのが見て取れると思う。以前はもっと広角で撮られた動画で、緑に光った細胞が片っ端から貪食細胞に食べられる動画もあったのだが、今見つけられない。理研はその動画を消したのだろうか?(追記)YouTubeではなくてNatureのサイトにあった。

緑に光った細胞が貪食細胞に食べられている動画

貪食細胞は健康な細胞は決して食べない。死んだ細胞や体内のゴミを食べる。死んだ細胞は細胞表面に"eat me signal"という特徴的な分子を出し、それを貪食細胞が認識して食べる。貪食細胞に食べられているということは死んだ細胞ではないのか?死んだ細胞に多能性があるのだろうか。



5.なぜ若山教授の手元にあるSTAP幹細胞の系統が違ったのか
3月後半のニュースで、若山教授の手元にあるSTAP幹細胞を第三者研究機関に解析に出したところ、小保方さんから129系統の細胞であると渡された細胞は実際は他の系統のものだったという報道があった。どこかでマウスの系統が入れ替わっている。今日発表された文書で小保方氏は、STAP幹細胞は若山教授によって樹立されたものであり、小保方氏の作為によって系統が入れ替わったとされるのは残念だと述べた。意訳するとこの件に関しては小保方氏に非は無く若山教授の責任であるとの意味にも取れるだろう。しかし、STAP幹細胞はSTAP細胞から誘導されるものであり、STAP細胞を作ったのは小保方氏だ。若山教授がたった10株かそこらしかないSTAP幹細胞を取り違えたりするだろうか?





本当はこれら5つに加えてkaho氏の主張もあるのだが、これは正式な論文等として発表されるのを待つことにしよう。小保方氏を含めた著者らには、これらの疑問に対して是非とも科学的な反論を示していただきたい。


関連投稿
「STAP細胞作製に成功した」とは何を意味するか
STAP騒動の行く末(時系列まとめあり)
[STAP細胞] 専門家による若山教授へのロングインタビュー(2/27)全訳
STAP論文の疑惑に関するネイチャーの記事(2/17)の全訳
STAP細胞懐疑派の声
STAP細胞関連の情報を読み解く: 科学立国とは?
STAP細胞に関するNew York Timesの記事について
第3の万能細胞:STAP細胞現る 2014年一番の大発見?

スポンサーサイト

« 今やりたいこと|Top|[小説] 「イン ザ・ミソスープ」 村上龍 »

コメント

他にも矛盾点が

小保方氏は、私以外にも複数成功していると申しておりました。
しかし、誰も名乗りを上げていませんね。
これだけ騒がれておるのですから、「いや、ちょっと待った。STAP細胞はちゃんとありますよ。ほらこのように。」って成功者は名乗るのではないかと思われます。

200回成功ってかなり高確率だと思いますが(何回作成実験したかは知りませんが)、未だ検証実験では成功していないのは明らかにおかしいです。

STAP細胞ができていたとしたら、普通保存しておくでしょう。決定的な証拠であり、もっとも大切なお宝なんですから。

STAP細胞があることに期待したいところですが、少なくとも小保方氏が示す方法はやはりでっち上げとしかみえないですね。

この記事を書いたのは4月ですが、それから相変わらず再現はされないし、逆に疑いは増えるばかりですね。STAP細胞は増殖しないので保存できないというのも細胞が酸処理で死んでるだけだと考えたら辻褄が合います。

マクロファージに食い尽くされたり、死滅した自家蛍光を否定するデータが掲載されているにこしたことはありませんが、それらでは、STAP幹細胞もFI細胞も出来ませんからどっちでもいいんです!
論文については、みなさん否定や疑義 不正 捏造といろいろ言いますが、自分で検証も解析してるわけではないのに、
ESという結論を簡単に鵜呑みできるんでしょうか?
STAPがESならば、こんな論文も研究も必要ないですよね~
いづれすぐバレる事を・・・この道のトップの研究者らがですよ~やるはずがない
小保方氏だけに攻撃の目が向けられますが若山氏にはあまり声が聞こえません おかしいですよね~

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://tokyocicada.blog.fc2.com/tb.php/71-00166ecf

Top

HOME

あぴと

Author: あぴと
生命科学の研究者。ポスドク。東京という街が好きです。
興味のあること:
生命科学、基礎医学、進化生物学、英語、読書、美術、音楽

Twitter始めました



mail: tokyocicada☆outlook.jp

学振関連記事のまとめ


にほんブログ村

この人とブロともになる

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。