東京BLOG

生命科学の研究者のブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

同性愛は生物学的に異常なのか?

少し前のニュースを騒がせたどこかの市議とか県議による「同性愛は異常」発言と、それに対する反応に思う所があるので記事を書きたい。

一連の発言を報じたニュース。
海老名市議 同性愛に対する 差別発言「同性愛者は異常動物」 炎上→削除
岐阜県議会で「同性愛は異常」と自民党元議長がヤジ 県職員のヘイト中毒問題めぐる質疑で


このニュースに対する2ch住民の反応。
海老名市議がツイッターに「同性愛は異常」 → 「差別」「人権侵害」と批判相次ぐ 痛いニュース
【速報】「同性愛は異常やぞ」とヤジ飛ばした岐阜県議、発言撤回せずwwww 使えるニュース2ch

2ch住民というのはとても偏りのある集団なので、日本人を代表する意見としては不適切かもしれないが、その匿名性によってより本音が書きこまれやすいので、人々が内心どう思っているかについて参考になる。

例外はあるが、これらの2ch住民による反応の中でよく見られるものとしては、同性愛は生物学的に異常であり、問題の発言も間違っていないといったところだろう。

さて、このような「同性愛は生物学的に異常」とする意見がいったいどこから来ているのかを考えると、2chという土地柄もあるので少なからずこの人の影響を受けている部分があるのではと考えられる。





このツイートに対して、「少数意見を尊重すべきでないと少数政党の人が言っている」という反応があって痛快だったが、このような性的少数者を差別的に見る傾向は、日本における性的少数者に対する無理解を象徴していると思う。




同性愛は「生物学的に異常」ではない

170: 名無しさん@1周年 2015/11/29(日) 12:10:23.79 ID:XTedLEsE0.net

生物学的には異常だろう。
種の存続に貢献しないんだから。


同性愛は生物学的に異常ではない。同性愛の個体はヒトだけでなく多くの高等生物で見られる現象であり、同性愛の個体が少数生じるということは種にとって正常なことである。むしろ生物学的に言うなら、集団の中で多様性が生まれることによってあらゆる生物が進化して繁栄してきた歴史がある。少数の性質を異常と排除することは多様性を否定することであり、種の繁栄に負の影響を及ぼす。

そもそも「種の繁栄のために子孫を残す」という発想を持つのはヒトくらいで、多くの生物はただ本能に従って子供を作って育てているだけであり、生物進化の大きな文脈で見ると人が種の繁栄を心配するのは余計な心配である。同性愛の性質を持つ個体は子孫を残さないので、同性愛的性質に淘汰圧はかからないはずだが、それでも多くの高等生物で同性愛の個体が見られるということは、同性愛の個体を生み出すような多様性が生物にとって重要であることを意味している。



社会的問題に対して安易に科学を適用すべきではない
そもそも性的少数者の議論の時に、どうして人々が突然生物学者になるのかは理解に苦しむ。僕は生物を専門に勉強し、その研究者としてプロになろうとしているが、上に引用したツイート元の少数政党の人はいったいどれだけ生物について知っているのだろう。どうして「生物学的に」正常なことと異常なことを人々はこうも簡単に断言できるのだろうと不思議に思う。「生物学的に」という言葉を付けると、あたかもそれが科学的に正しいことであるかのような印象を与えるが、このような問題に対して安易に科学の権威を盾にするのは誤りである。というのも、過去に人種差別が科学を盾にして正当化されてきた歴史があるからだ。科学は本来、何が社会的に正しくて何が間違いといったような、社会的な価値とは無関係に発展するものである。しかしながら、一部の科学的事実を悪用し、都合の良いように解釈することで、例えば人種差別と言ったような卑劣な行為が正しい事のように主張されることがある。このような歴史があるので、社会的問題に対して安易に科学の名を借りるべきではない。

性的少数者を巡る議論の本質は、それが生物学的に正常なのか異常なのかではなく、大多数の人とは異なる性質を持ったが故に苦しみや痛みを抱えている人々を社会がどうサポートできるのかということである。




同性婚を認めても人類は滅亡しない
「同性婚を認めると少子化になる」 「同性婚を認めると人類社会が続かない」 このような意見は一体何を根拠に言っているのだろう。何かこのことをきちんと統計学的に示した研究でもあるのだろうか?前述のように、同性愛の個体はヒトだけでなく様々な生物種で見られる。これは人がその祖先の類人猿から進化して分岐した時から同性愛が存在したことを示唆している。つまり人類は最初から少数の同性愛者を含んで繁栄してきた可能性が高い。同性愛者は子孫を残さないにも関わらずだ。同性婚を認めても異性愛者が突然同性愛になるわけではない。同性婚を認めると人類社会が立ち続かないという主張はちょっと理解できない。

これはwikipediaの記事から取ってきた日本の出生数と合計特殊出生率のグラフである。

これを見ると、日本の出生率は70年代から右肩下がりであり、この間同性婚が推奨されていたわけではない。少子化の主要な原因が同性婚の普及ではなく他のとこにあるのは火を見るより明らかだ。少数政党の人は少子化の心配をするなら同性愛者を差別するのではなくもっと別の問題に取り組んでもらいたい。

また、オランダは世界に先駆けて2001年に同性婚を認めた国だ。
オランダの出生率のグラフ


同性婚を認めた後も出生率の目立った低下は見られない。それよりもむしろ日本と同様に70年代に出生率が激減しており、同性婚以外の要因が出生率に大きな影響を与えることは簡単に予想できる。



もちろん中には同性愛者に対して寛容な意見も見られるが、少なくとも2chのまとめサイトを見る限り、日本は同性婚を制度として認めるには人々の理解が足りないと感じる。たぶんまだ多くの人は性的少数者に対して偏見や誤解を持っているのではないだろうか。もっと議論が成熟するにはまだ少なくとも何年もかかるように思う

スポンサーサイト

イルカ漁・捕鯨は悪なのか?

先日、ケネディ駐日米大使が太地町で行われているイルカ追い込み漁の非人道性について懸念を表明した。

太地町のイルカ追い込み漁に非難の声、ケネディ大使も懸念表明-CNN


そのニュースに対する国内外の反応

国内:ケネディ大使:「イルカ追い込み漁の非人道性を深く懸念」- watch@2チャンネル

海外:
イルカ追い込み漁にケネディ駐日大使も批判ツイート。「日本人は残酷」←「手のひら返し乙」 - 劇訳表示

海外「他国に干渉するな」 ケネディ大使のイルカ漁反対表明にコメント殺到 - パンドラの憂欝

悲報!また、イルカの殺戮が日本で始まるぞ!!CNNが報じるイルカ漁。- ジパング 世界の反応

ついでに日本が行っている捕鯨についての海外の反応
シェパード「日本の捕鯨船団がクジラを殺した事を確認っ(キリッ」 海外「恥を知れ!」「文化だろ!」 - 劇訳表示



太地町のイルカ漁に関して、僕個人としては、合法的な漁を持続可能な形で行っているのだから第3者がとやかく言うことではないと考える。一方で、日本の小さな町の出来事がこれだけ世界的に取り上げられて、それを見た人々から批判の声が上がっているということも事実であり、なぜそのような批判が起こるのかということについて考えてみなくてはいけないとも思う。

太地町のイルカ漁がこんなにも有名になったきっかけは、言うまでもなく映画「The Cove」がアカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞したからだ。知能が高く、水族館ではかわいらしい姿を見せるイルカが入り江に追い込まれた挙句殺され、海が文字通り血の海となる映像に多くの人が衝撃を受けたのだろう。映画では漁師が槍のようなもので追い込んだイルカを繰り返し刺し、イルカがもがく映像が流れる。その映像は誰が見ても気持ちの良いものではない。

しかしながら、映画で流れた海が血で染まるような漁の方法は現在は行われておらず、より苦痛が軽減されるような絶命の方法を取っているらしい(イルカ追い込み漁-wiki)。ケネディ大使が言う「非人道性」というのはおそらく動物が苦痛を感じるような漁の方法を指して言っていると思われるのだが、それに関しては国際社会の批判もあってか近年改善されているように見える。

上に貼った海外の反応で、僕が理解に苦しむのは次のような批判だ。

イルカは、牛、豚、鳥とは違って、飼育されてないんだよ。野生の動物なんだ。 
野生の動物を、人間が食べるために捕獲するのには俺も反対だ。


・ねぇ、、豚がどのように殺されてるか知ってる?
 牛は??

_彼らは食べられる為に生まれたんだ。。。
 自然のイルカは違う。


牛や豚は人が食べるために飼育されているので殺してもよく、野生のイルカやクジラはそうではないから殺してはいけない。これはいったいどういうことだろう。牛や豚などの家畜にしたって、自分が後々食べらるために殺されることを承知して受け入れているというわけではない。彼らも当然のことながら他の生物と同様に苦痛を感じることができるし、殺されるのが本望のはずがない。

同様の発言は、この手のまとめで必ずと言っていいほど目にするし、反捕鯨のyoutube動画で言われているのも聞いたことがある。これは、牛や豚などの家畜は神から食糧として与えられたものなので、殺して食べても構わないという、キリスト教の宗教観に由来するらしいという分析も目にする。しかし、理性的に考えた時に、イルカやクジラは特別で牛や豚とは違うというのは多くの人にとって納得できる理由ではないだろう。特にそれが、イルカ漁や捕鯨で生計を立ててきた人にとってはなおさらだ。欧米人の宗教観を押し付けられる筋合いは彼らにはない。

「イルカやクジラは知能が高いから殺して食べるべきじゃない」というのも良く見るが、これもおかしな論理だと思う。水族館のショーで高度な芸を見せる姿に親近感を覚えてのことだろうが、知能が高いと苦痛や恐怖が大きいのだろうか?そんなことはないと思う。死への恐怖、傷に対する痛み、これらは生物が生存するために進化のかなり早い段階で獲得された形質だと考えられる。生物は恐怖や苦痛を避けるように行動して、生存率を高めてきた。だから恐怖や苦痛はどんなに知能が低い生物でも感じることのできる感情なのではないかと考えられる。恐怖や苦痛を正確に定量する術が無いので、それを証明することはできないが、我々高等な生物の恐怖・苦悩は偉大で、下等な生物のそれらは大したこと無いから殺しても構わないというのは、到底納得できない。

こうしてイルカ漁や捕鯨の現状を見直してみると、特に国際社会の批判を浴びるような点は無いように思える。捕鯨にしたってIWCに決められた捕獲量の上限を守って行われているわけだし、絶滅危惧種を捕獲しているという批判も当たらない。The Cove以来、「日本人によってかわいらしいイルカやクジラが虐殺されている」と報道すれば、視聴者の感情に訴えかけられる良いニュースとなるので、今回の件のように大きく海外メディアに取り上げられてしまうという不運がある。イルカ漁や捕鯨を続けるのであれば、苦痛の軽減に努めている点・持続可能な捕獲量を守っている点を粘り強く説明していくしかないだろう。

ケネディ大使には是非「非人道性」が具体的にどのようなことを指すのか説明してほしい。

[気になるニュース] 森口氏、再び [iPS捏造騒動]

あまり報道で取り上げられていないようなので、記事にしてみる。

6月14日付けで科学誌NatureのWebサイトで書かれた記事がある。

Self-confessed liar publishes more dubious stem-cell work


"He’s back." (彼が戻ってきた)で始まるこの記事、何を隠そうiPS細胞に関する虚偽の発表で昨年話題になった森口氏についての記事である。騒動が一段落した後、一時期芸人になるという噂もあったが、結局テレビ局からも締め出され、その後の消息が不明だった彼である。

この記事によると、森口氏による論文がここ2ヵ月で3本、BMJ Case Reportsという査読ありの雑誌に掲載された。

しかしながら、3本の論文のすべてが昨年の騒動で取り下げられた論文の蒸し返しであった。3本とも森口氏がCorresponding author(責任著者)になっていて、他にJoren Madsonという著者の名前があった。Joren Madsonはボストンにある"Reprogramming inc."という会社の所属と論文には書かれている。しかしながら、Natureが確認したところそのような会社は見つけられず、当然のごとくJoren Madsonという人物の存在も確認できなかったという。森口氏の所属は千葉にあるReprogramming inc.になっているが、その存在も確認できなかった。

Natureが森口氏に事実確認のEメールを送ったところ、次のようなメールが返ってきたという。
"Thank you very much for your interest. This week including today is difficult as I am in hospital. In another days (next weeks, etc), I appreciate if I can discuss about the issue via e-mail. I look forward to hearing from you via e-mail."


Natureの記事の内容は以上だ。

この記事は一種のスクープのような形で書かれていて、Natureが独自に検証した内容のようだ。表面上はあくまで紳士的な記述に留まっているが、最後に文法が滅茶苦茶で稚拙な言い回しの彼のメールの原文を載せる痛烈な皮肉で終わらせている。

たぶんまともな科学者で彼の言うことを信用する人はすでに皆無だろうから、大方の反応としては「やれやれ、またやってんのかよ」といった感じだと思う。

問題はこのような明らかに出所が真っ黒の論文が査読ありの国際誌に載ってしまったことだろう。Natureの問い合わせによって雑誌側も森口氏の3本の論文について調査中とのことなので、じきに昨年と同じように取り下げられるだろう。BMJ Case Reportsという雑誌は、僕の大学内からでもAbstractしか読めないので、どのようなクオリティーのFigureが論文に載っているのか判断がつかないが、出版の前に気づくことはできなかったのだろうか。

森口氏については、もはや逆に気の毒に思うこともあるが、研究者の一人としてはこのような捏造論文がこうも簡単にpublishされてしまうことを危惧している。査読や出版の過程は性善説に基づいているので、気づいた読者が告発していくしかないのだろうか。

[気になるニュース] 中立なメディアなど無い

橋本徹大阪市長の慰安婦発言問題について目に入った記事

【慰安婦発言】 橋下氏「朝日、毎日は最低。『当時』って言葉も全部外して。それやるんだったら囲み止めます」 朝日「いやちょっと…」

要約すると

市長「朝日や毎日などのメディアの報道の仕方が悪いから誤解を招いた」

朝日記者「市長なんだから正確な意図が伝わるように
      発する言葉の一字一句に気を使うべき」

市長「囲み取材でそんなことを行うのは不可能だから、
   あなたがそういうなら囲み止めます」



いい加減今回の件のような言葉尻を掴んで意図を曲解して、
問題を呼び起こすようなメディアの手法にはうんざりする。

メディアにそういう余地を与えた市長も軽率だったし、
それをセンセーショナルな見出しで報道した朝日・毎日には辟易するし、
その報道を新聞社の思いのままに受け取って市長を批判する一部の民衆や諸外国にもがっかりする。


中立なメディアなんていうのは存在しない。
・どういう事実を報道するか
・その事実の中で何を情報として伝えるか
・伝えるためにどのような言葉を使うか
これらのステップすべてにメディアの恣意的な選択の余地がある。
だから、同じ事実についての報道でも、右から見たのと左から見たので、
全く異なる記事が出来上がる。

各新聞社はそれぞれ政治的な意思を持って報道する偏った集団だ。

ただし、これは言論の自由が保障されてる社会で当然のことで、
右の思想集団があれば左の思想集団もあるのが健全な社会の証拠だと思う。

上記リンク中で、朝日新聞をゴミだと批判するコメントが多くあるが、
朝日新聞の報道がゴミだと思うなら朝日新聞に期待しなければ良いだけのこと。
民間の新聞社に「中立でなければならない」と要求するのは間違っている。
新聞社のそういう偏った姿勢が民衆の支持を得られなければ、
新聞社は読者を失って会社が潰れるだけだし、
一定の支持層がいるから朝日新聞はまだ存続している。
それに、反政府的な記事が市民に良い影響を及ぼした例も少なからずある。

それが民主主義社会というものだ。
新聞社というのは中立ではなく偏った集団なのだ。

情報の受け手には、新聞の記事は特定の思想を持つ集団によって作られた、
偏ったものだという認識でそれを読むことが要求される。

問題は、日本の民衆に情報に対して批判的に接する姿勢(critical thinking)
が育っていないことだ。日本だけの問題ではないだろうが。

麻生総理が「漢字が正確に読めない」というよく分からない理由でバッシングされた時も、
「2大政党が政権を奪い合うのが健全だ」とかいう
中身を無視した上辺だけの言葉に乗せられて民主党に政権を与えた時も、
民衆がメディアに扇動されてそのまま社会を変えてしまった。

新聞社が特定の政治思想を持った偏った集団だというのは、
社会に出て各方面の情報に気を配っている人なら自然と気づくことなのだが、
おそらくそれに気づかずに一生を終える国民も数多くいるだろう。

僕は、中学校や高校でLogical thinkingやCritical thinkingを教えるべきだと思う。
そうすることが、将来的により健全な社会を築く礎になると思う。

しかし、現状の義務教育では、客観的に情報を評価するどころか、
特定の歴史観の植え付けが公的な課程として行われ、
「朝日新聞から入試問題に数多く出題された」という理由で、
高校生に朝日新聞の購読を薦める謎のキャンペーンが行われている。

終戦後から続くこれらの教育の在り方について、
そろそろ議論してもいいんじゃないかと思う。

Top

HOME

あぴと

Author: あぴと
生命科学の研究者。ポスドク。東京という街が好きです。
興味のあること:
生命科学、基礎医学、進化生物学、英語、読書、美術、音楽

Twitter始めました



mail: tokyocicada☆outlook.jp

学振関連記事のまとめ


にほんブログ村

この人とブロともになる

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。