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[STAP細胞] 専門家による若山教授へのロングインタビュー(2/27)全訳

以前も紹介したアメリカの幹細胞生物学者、Dr.Knoepflerのブログで、STAP細胞に関して若山教授にロングインタビューを行っていた。

この件に関して継続して批評を行ってきた専門家によるインタビューとして、実に質問しづらいことも聞いている。貴重な記事だったので日本語に全訳した。

元記事:Interview with Dr. Teru Wakayama on STAP stem cells

以下訳________________________________


STAP幹細胞に関する若山博士へのインタビュー


私は若山照彦博士(知人からはテルと呼ばれている)にSTAP幹細胞の状況に関するQ&Aに答えてくれるかどうか尋ねた。

テルはキメリズムに関して記述し、Nature letterとして発表されたSTAP幹細胞の論文の責任著者だが、Nature articleとして発表され、STAP幹細胞の作製に関して記述したもう一方の論文では責任著者ではない。

テルは親切にも招待に同意してくれた。彼は直接的で時にタフと思われるような質問にも率直に答えてくれた。彼はまた、STAPの今後について理にかなった計画も示してくれた。どうもありがとう、テル。

彼の回答は、彼の科学者もしくは一個人としての偉大な名声を反映しているように思える。テルは幹細胞分野で真に善良な研究者だ。テルはまさに私が呼ぶところの"mensch"(すばらしい特性を持つ人の意)だ。私は、STAP幹細胞の再現ができるかどうか1年間待つというテルの提案を全面的に支持する。

以下にインタビューを掲載する

1.バカンティ研究室と若山研究室の間におけるSTAP幹細胞の共同研究はどのようにして始まったのですか?なぜ彼らと協力することを決心したのですか?この研究の始まりについてもっと詳しく教えて下さい。

テル:小島博士(バカンティ研究室)が私にe-mailで連絡してきて、キメラの作製を手伝ってくれとお願いしてきました。その時点では、そのプロジェクトは到底不可能に見えました。だから私は要請を受諾しました。私はそのような不可能な実験が好きですから。


2.バカンティ博士や小保方博士と最近話しましたか?会話はどんな感じでしたか?彼らと連絡が取れていない場合は、なぜ取れないのですか?

テル:バカンティ博士とは話してないです。

小保方博士とは話しました。しかし、日本で主に問題となっているのは再現性ではなく、画像やバンドのミスです。現在理研と外部の調査団が問題を調べています。でも、彼女の研究室ではSTAP細胞を作製できると彼女は言っていました。


3.現時点でSTAP細胞に対するあなたの自信はどの程度のものですか?より心配になっていますか?

テル:私が理研を去る前、私は脾臓からSTAP細胞を作ることに成功しました。でも一度だけです。その時は小保方博士がよく指導してくれました。

今は数人の知人(日本ではない)が部分的な成功(Octの発現のみ)をe-mailで知らせてくれています。だから、私は一年以内に誰かがSTAP細胞の作製を発表するだろうと信じています。


4.私は大抵の人と同様にSTAPに関するマウスでの研究は強固で説得力があると確信しています。あなたは個人的に科学者として世界から一流の評価を得ていますね。一方で人々は特にSTAP細胞それ自体に関して関心があるようです。現在私が最も多く受ける質問は以下の様なものです__STAP細胞がES細胞やiPS細胞の混入の結果である可能性はありますか?__このようなことは起こりえますか?起こりえるとしたらどのような状況でしょうか?

テル:コメントありがとうございます。

私はSTAPからSTAP-SCを複数回樹立しました。混入がその度に起こるなんてことは考えづらいです。さらに、私はSTAP-SCを129B6GFPマウスから樹立しました。その当時、我々はその系統のES細胞を持っていませんでした。

私がSTAP-SCの樹立に成功した時、大元のSTAP細胞はOct4-GFPをよく発現していました。この状況ではSTAP-SCの樹立は胚盤胞からES細胞を樹立するより簡単なんです。

さらに、包括的なmRNA発現データもSTAP-SCがES細胞でないことを示唆しています。



5.あなたはSTAP幹細胞をあなたの研究室では作れないと仰っていました。実験方法の観点から、なぜそのようなことが起こると思いますか?現在と過去との違いは何でしょう?また、あなたは理研にいた時にSTAP細胞の作製に成功したとも言いました。より細かく教えていただけますか?あなたはSTAP誘導の作業を100%自分の手で行ったのですか?繰り返しになりますが、iPS細胞やES細胞が何らかの理由で混入した可能性はありますか?

テル:私はたった一度だけ小保方博士から指導を受け、そして理研を去りました。

我々が過去に研究室を移動した時、自分自身の技術でさえ再現することがどれだけ困難だったか分かりますか?ハワイからロックフェラーに移った時、私はマウスのクローン作製を再現するのに半年を費やしました。これは私の技術です。自分の技術でさえ多くの時間を要したんです。しかし、STAPの作製法は私の技術ではなく、別の研究室で自分ではない人が見つけた技術です。だから、これを再現するのはさらに難しいことだというのは当然です。

私はそれぞれのステップを小保方博士に監督してもらった上で、100%自分の手で再現しました。ほぼ同様に、私の博士課程の学生もSTAP-SCの樹立に成功しています。

これらの実験の初期段階では、我々はES細胞やiPS細胞を同時に培養していません。後になって、対照群として時にES細胞を同時に培養していました。



6.世界中の多くの人々がSTAP誘導法を試し、失敗によって歯がゆい思いをしています。実験法を記した論文を準備していることは知っていますが、これがどれだけ重要な事柄かを鑑みて、詳細で段階的なプロトコールを今すぐ研究者に向けて公開することを検討してくれませんか?私のブログに投稿してもいいし、科学雑誌への実験法論文の投稿には影響無いでしょう。そうすることにより、人々の助けになると思います。1ヶ月や2ヶ月実験法論文が出るのを待っているのでは遅いんです。

テル:そうですね、現在理研が詳細なプロトコールを発表しようとしているところです。キメラとその樹立に関しては私が担当しました。しかし、キメラとその樹立は一般的なプロトコールで、STAPに特別なものではないんです。なぜなら、ES細胞の場合と同じか、それよりも簡単ですから。残念ながら、今すべての責任は理研にあり、わたしは理研を去った者です。私も知りたいけれど、今は分からないんです。



最後に、私が聞かなかったことで最後に付け加えておきたいことや質問はありますか?もしあるならどうぞ。

テル:私は逃げない。何故なら私の実験結果においては、すべてのことは真実だから。しかし、新しい技術を再現するのは時間が掛かるんです。例えば、最初のクローン動物、ドリーは論文が出るまで一年半もの間再現されませんでした。ヒトのクローンES細胞の論文は未だに再現されていません。だから、少なくとも1年は待って下さい。私はその期間の間に、誰かもしくは私自身が再現に成功すると信じています。

注)彼の要望に従い、テルの回答中の誤植やスペルミスを少し修正した。何故なら英語は彼の第一言語ではないから。しかし、彼の回答の意図が変わるような変更は一切加えていない。


訳終わり________________________________

2014.8.18追記
若山教授が自らの手でSTAP細胞を作製していたことを不思議に思って訪問された方へ
以下のエントリーを参照してください。
「STAP細胞作製に成功した」とは何を意味するか



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プレイステーションの思い出

最近YouTubeを見ているとたまにプレイステーション4のCMが流れてくる。自分の経験はPS2で止まっているので、流れてくる映像がどれくらい画期的なのかは分からないけれど、たぶんその進歩は著しいんだろうなと思いながら見ている。

プレイステーション・・・その響きが懐かしさを感じさせる。小学生の時はゲームと言えば任天堂だったので、高学年になってプレイステーションが流行りだしたときは「ソニーとか邪道だろwww」と半信半疑だったのを覚えている。それがいつの間にか家のテレビの前に初代プレイステーションが置かれるようになり、気が付けば学校が終わった後にはひたすらそれで遊んでいたように思う。

「ジョン」
という低い声と同時にプレイステーションのロゴが現れて始まるテレビCMも懐かしい。
本当に「ジョン」と言っているかどうかは定かではない。






当時はテスト前以外は勉強なんてそっちのけでゲームをしていた。ケータイもインターネットも本格的な普及前で、友達から遊びの誘いを受ける時は家電に電話がかかってきた時代。中学生にもなると公園でサッカーをする以外には特に外で遊ぶことも無くなり、少年たちは家のテレビの前で孤独にゲームをしていた。

色々なゲームをやった。RPGとシミュレーションが好きだった。今思い返して、どのゲームが一番印象に残っているかと考えると、ファイナルファンタジーだと思う。

初代ではファイナルファンタジー7、8、9とプレイした。どれも思い入れがあるし、やり込んだ記憶がある。その中であえてお気に入りを挙げるとしたら、8を選ぶ。

ドローシステムの件で低評価を受けることが多い8だが、どれが一番好きかなんて理屈で決めるものではない。当時の自分がキャラクターに感情移入して熱中してプレイし、ストーリーを追って一喜一憂した。その体験は当時の自分に強く影響を与えるものだった。だから「Eyes On Me」がなんかの拍子に流れてくると、今でも懐かしさで一杯になる。







9のキャラクター1人1人の内面を深く照らし出していくようなストーリーも印象に残っている。






こうやって自分の経験を思い返してみると、たかがテレビゲームでも結構豊かな体験になっているんじゃないかと思う。テレビゲームをすると頭が悪くなるとか社会性に乏しくなるとか色々なことを言う人がいるけれど、本当にそうだろうか?そういう主張の根拠になるような調査はいい加減なことが多々あるし、多種多様なゲームソフトとそれを取り巻く多種多様な環境があるなかで、少なくともそういう主張を一般化できる根拠は無いと思う。例えば小説を読んだり映画を見たりすることと、ファイナルファンタジーをプレイすることに、青少年が持ちうる体験として明確な優劣があるとは考えられない。

他人の教育方針に口を出すわけではないけれど、今でもテレビゲームに根拠のない偏見を持ってそれらを子供に与えない家庭を見ると、少し可哀そうに思う。ゲーム機があることでできたかもしれない様々な体験と無縁なのか・・・と。

STAP論文の疑惑に関するネイチャーの記事(2/17)の全訳

2月17日付けで科学誌Natureのウェブサイトに掲載された、STAP細胞の論文に生じた疑惑に関する記事。おそらく、この疑惑に対して現在のところ最も情報量が多く、新しい事実も書かれていた。この問題に関しては興味を持っている人が多数いるようなので、全部訳してみた。

元の記事
Acid-bath stem-cell study under investigation

以下訳_______________________________

酸浴による幹細胞研究に対する調査

日本の研究機関は不正の告発を受け、話題沸騰の論文に対する調査を開始した。


日本の代表的研究機関は、幹細胞研究の草分け的研究に対する懸念が持ち上がったことを受け、調査を立ち上げた。

神戸に位置する理研(理化学研究所)は、同研究所で働く生物学者小保方晴子氏の仕事に対して持ち上がった不正疑惑について調べていると金曜日に発表した。彼女は先月ネイチャーに発表された2本の論文 ー 成熟した体細胞に酸や細胞膜に対する物理的刺激を与えることで、未成熟な状態にリプログラムする簡単な方法を示した論文 ー の筆頭著者として名声を得た。理研はブログサイトに報告された小保方氏の論文における複製画像の使用や、多数の再現実験失敗を認識している。

未成熟な状態の細胞は体を構成する様々な種類の細胞に分化することができるので、患者特有の細胞を作るための理想的な供給源になると考えられている。それらは病気の発生や薬効評価の研究に使用でき、さらには機能不全を起こした臓器再生のために移植できるかもしれない。成熟した細胞をリプログラミングするための、首尾一貫した直接的な道筋は2006年の仕事で最初に示された。その仕事では4つの遺伝子の導入により、成熟した細胞を未成熟な状態にリプログラミングできることが示され、それらはiPS細胞として知られている。しかしながら、遺伝子導入は細胞の安全性に不確定性をもたらす可能性があり、至ってシンプルにリプログラミングを行えることを示した小保方氏の発表は賞賛を受け、同時に懐疑的な人も幾分か生じさせた。

先週バブピア(PubPeer)などのブログが、ネイチャーに出た2つの論文と2011年に出た以前の論文(成人の組織に幹細胞が存在する可能性を示した論文)における問題を報じ始めたことで、懐疑の念はさらに深くなった。小保方氏が筆頭著者である2011年の論文では、とある幹細胞マーカーの存在を証明するバンドを示した図が反転させられた後に、別の幹細胞マーカーの存在を示す図に転用されていた。その画像の一部分はさらに別の幹細胞マーカーを示す図にも使われていた。同論文には他にも明らかな複製画像がある。

その仕事の責任著者であるハーバード大学医学部の麻酔科医チャールズ・バカンティはネイチャーに対し、先週になっていくつかの"画像の混同"を知ったと話した。彼は既にジャーナルに連絡し、訂正を申請している。「それは確実にうっかりミスだったようで、他のテータや結論、もしくは論文のその他の構成要素に影響をあたえるようなものではない」とバカンティは話す。

最近ネイチャーに発表された2本の小保方氏が責任著者である論文(バカンティは両論文の共著者であり、片方の責任著者である)における問題もまた画像に関係する。一方の論文では遺伝子解析の結果を記した最初の図の中の一部の図が切り接ぎされているようだ。もう一方の論文では、別々の実験の図として使われている2つの胎盤の画像が極めて似通っているように見える。

山梨県に位置する山梨大学に在籍し、クローニングのスペシャリストである若山照彦は、両論文の共著者であり、胎盤の写真のほとんどを撮影した。彼は2つの画像が似通っていることを認めた上で、たぶん単純な混同であろうと話す。若山氏は論文の作成中に理研から在籍を移しており、百枚以上の画像を小保方氏に送ったので、どれを使うべきか混乱したのだろうと語る。彼は現在問題を調査中だと話した。

小保方氏の最新の実験結果の再現が困難なことも懐疑の念を増強させた。ネイチャーのアンケートに回答した10人の著名な幹細胞研究者のうち、誰一人として再現に成功していない。幹細胞研究分野の研究者から実験結果報告を募集しているブログでは、8件の失敗が報告されている。しかし、これらの試みの多くは小保方氏が使用した細胞種を使っていない。

一部の研究者はまだ問題視をしていない。北京の動物学研究所に在籍し、クローニングの専門家であるQi Zhouは、酸処理後にほとんどのマウスの細胞は死んでしまったと話す。「実験系の構築はコツがいるんだ。経験豊富な研究室にとっては簡単な実験でも、部外者にとっては極端に難しくなることがあるから、我々の研究室の技術による再現性を元にして発見が本当かどうかはコメントしないよ」とZhouは語る。

イスラエルのレホボトに位置するワイツマン科学研究所の幹細胞生物学者、ヤコブ・ハンナは「新しい発見をふいにしないように注意深くならなければいけない」と話す。一方で彼は発見に対して「かなり懸念を持っていて、懐疑的」だ。彼は諦める前に約2ヶ月間は挑戦することを計画している。

プロトコールが単に複雑なのかもしれない。というのは、若山氏でさえも実験結果の再現に苦労しているからだ。彼と彼の研究室の学生は論文発表の前に、小保方氏からよく指導を受けたこともあり、独立して実験の再現に成功していた。しかし、彼が山梨に移ってからは一度も運に恵まれていない。「単に酸を加えるとだけ聞くと、簡単な技術なように思えるけれども、そんなに簡単じゃないんだ」と彼は話した。

若山氏は、彼が独立して小保方氏の実験結果の再現に成功したことから、この技術が本当であることを確信している。彼はさらに、新たに受精した胚を除き、小保方氏によって作られた細胞が胎盤などの組織を形成できる唯一のものであることから、細胞が別のものに置き換えられていた可能性はありえないと念を押した。「私が自分で実験して見つけたんだ。実験結果は絶対に真実だ」と彼は話す。

何人かの科学者は著者らにより詳細なプロトコールを求めて連絡を取っているが、返事は得られていない。北京大学の幹細胞生物学者であるHongkui Dengは、「すぐに詳細なプロトコールを発表する」と言われたと語る。バカンティは問題なく実験を再現できるとし、小保方氏に"混乱を招きかねない変動を避けるために"プロトコールを発表させるようだ。

小保方氏はネイチャーのニュースチームからの質問に答えていない。

雑誌ネイチャーを出版するネイチャーパブリッシンググループの代表者は、「ネイチャーも事態を認識しており、調査中だ」と語った。

訳終わり_______________________________


STAP細胞を報告した2つの論文の画像に不自然な点が見つかり、再び世間を騒がせ始めたのが先週のことだ。見つかった不自然な画像は、論文の発見について一から覆すような性質のもではないが、特に胎盤画像の類似などは論文の信用を落とすのに十分な"不自然さ"なので、STAPの存在に懐疑的な見方をする人が国内でも増えていた。さらに、追試の報告サイトで多くの報告がSTAP細胞の作製に失敗していることが事態に追い打ちをかけていた(2月18日現在、STAP細胞作製の成功を示唆する報告が一報だけある)。

あらためてNatureのこの記事をじっくり読んでみると、どうやらSTAP細胞作製のためには相当のコツがいるようだ。共著者の若山教授でさえ、現在は実験の再現に苦労しているという事実は驚きだ。STAP細胞は発表当時、簡単に作成できて再生医療に多くのものをもたらす発見として注目されたが、実験が他所で再現できないようでは始まらない。小保方氏らには早急に詳細なプロトコールを公開してもらいたい。

それとは別に、画像の不自然さについては説明が必要だろう。

STAP細胞について気にかけている人(僕も含めて)は、先週から動向を見て一喜一憂しているかもしれないが、この記事の若山先生の話を読んで見ても分かるように、論文のすべてが嘘であったという話は考えづらいと思う。詳細なプロトコールの発表があるのか、それを元に独立した研究室で再現ができるのか、1ヶ月2ヶ月単位で様子を見なければ答えは出ないだろう。

一方で、当初の報道内容に多くの語弊が含まれていたということはおそらく確かで、それはこの件に関してブログを書いている僕も反省しなくてはいけないし、報道機関も反省しなくてはいけないことだと思う。

今後もこの件には注目していきたい。

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[小説] 「白鯨」 メルヴィル

非常に好奇心をそそる読書だった。「白鯨」は1851年にアメリカ人作家・メルヴィルによって発表された小説だ。アメリカ文学の叙事詩的巨編と巻頭には記されており、複数の出版社から訳が出版されている。

物語は、19世紀に世界で盛んに行われていた捕鯨にまつわる話だ。アメリカから出航した捕鯨船・ピークオッド号が、かつて船長の片足を奪った因縁の白鯨、モビー・ディックを仕留めるための航海を始める。メルヴィルは実際に捕鯨船員として捕鯨に従事したことがあり、その経験を元に捕鯨船における作業や人間関係が詳細に生き生きと書かれている。さらには、メルヴィルはこの作品の執筆に当たり、鯨に関して記載しているあらゆる書物を調べており、「鯨学」と呼ばれる鯨に関する背景知識を説明する章がページ数にして1/4から1/3を占めるのではないだろうか。このような本書の特徴を表すのに「知的ごった煮」という言葉が使われている。まさにその通りだと思う。

物語としても、非常に力のある言葉で乗組員たちが描写されており、特に終盤のモビー・ディックとの対面に向かう各章は読みごたえがあった。それに加えて、この本は文化的な側面で非常に面白い。19世紀の捕鯨船の様子がこれだけ克明に書かれているというだけでも貴重な資料だし、現在は個体数の減少により禁止されている商業捕鯨が当時どのような社会的背景で行われていたか、現代と比較して見るのも興味深い。

メルヴィルは作家であり、元捕鯨船員でありながら、非常に科学的・論理的思考に長けていたようで、当時の知識でどのように鯨が科学的に述べられているか見るのも面白かった。一例として「鯨は哺乳類か、それとも魚か」と議論する章がある。ダーウィンによる「種の起源」が出版されたのが1859年なので、この本はそれ以前に書かれており、当然メルヴィルの科学観の根底にもキリスト教的世界観がある。科学的思考の進んだ先にはもちろんキリスト教的世界観と矛盾する点が生じてくるはずなのだが、メルヴィルはそれら2者のちょうど狭間で上手く「鯨学」を語っている。非常に興味深い。

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STAP細胞懐疑派の声

先日の投稿では、権威ある日本人の研究者・西川伸一氏のSTAP細胞に関する記事を取り上げた。西川氏は結果に驚きを抱きながらも、小保方氏の研究者としての資質を評価し、今後の動向について注目していた。

しかしながら、STAP細胞がもたらした衝撃は大きく、その常識を覆す結果について懐疑的な意見を持つ人も当然いる。この投稿では、幹細胞研究の分野での著名な研究者の一人であり、STAP細胞に懐疑的な意見を持つ人を紹介したい。

Dr. Paul KnoepflerはUniversity of Califolnia、デイヴィス校で幹細胞の研究をしている。
Dr. Knoepflerのwiki(英語)

彼がブログに先週こんな記事を投稿している。

In a pickle over STAP stem cells: top 5 reasons for skepticism

"in a pickle"はピクルスの液に漬かっている状態の意味で、"困難な状況"を意味するのに使う。STAP細胞を巡る困難な状況と、STAP細胞作製のために酸性の液に浸けることを掛けている。彼は、STAP細胞に対して懐疑的な5つの理由を挙げている。


1. The STAP method & results are illogical.
STAP実験法と結果は非論理的だ


2. The STAP team previously reported “spore” stem cells, which to my knowledge have not been independently replicated.
STAP細胞を発表したチームは、以前Spore stem cellという別のグループで未だ再現性が確認できていないと思われる細胞を報告した。


3. The team also previously reported adult pluripotent stem cells.
STAP細胞のチームはさらに、成人の組織に存在する多能性細胞を以前報告した。


4. Evolution should have selected against a hair trigger for conversion to pluriopotency or totipotency.
些細な刺激による多能性・全能性の獲得は、進化によって排除されてきたはずだ。


5. Why the delay to make human STAP cells?
なぜヒトSTAP細胞の作製が遅れているのか?


元記事では一応それぞれの点にそう思う理由が書かれている。元記事に限らず、Dr. Knoepflerの一連のブログ記事を読んでいて感じたことは、彼がSTAP細胞に懐疑的な一番の理由はDr. Vacantiが嫌いだからなんだろうなということだ(あくまで個人的な意見だが)。Dr. Vacantiはこれまで色々な成果を報告してきたが、その中のいくつかは報告後に別のグループによって実験が再現されること無く今に至っており、今回のSTAPの論文も信用ならないと思っているのだろう。研究者が特定のグループの成果を絶対に信じたがらないというのは、この世界ではよくあることだ。

1.の非論理的との指摘は、元記事を読んでみると、これまでの生物学の常識にあまりにも反するということをどうやら意味したいようだ。しかし、Nature誌によるインタビューで小保方さんが語っていたように、植物やトカゲの尻尾に代表されるような、ストレス環境下で獲得される多能性はすでに生物に存在しているということを考えると、発想としてそこまで非常識というわけでもないと思う。同様にSTAP細胞の発見をストレス応答研究の延長線上に見る研究者はネット上でも散見される。

2. 3.の指摘は前述のようにDr. Vacantiのグループの報告は信用ならないという主張だ。自分は幹細胞研究や組織工学の分野の専門家ではなく、Dr. Vacantiグループの分野内での評判やこれまでの文脈は分からないので、この点に関するコメントは控えたい。

4. の指摘の趣旨は以下の通りだ。
「我々の体において、傷を負った箇所や腸管など、弱酸性の環境を示す場所はすでに存在している。仮にpH5.7くらいの弱酸性で細胞が多能性を獲得したとすると、多能性を獲得した細胞由来の腫瘍が生じるはずである(ES細胞やiPS細胞を何も操作を施さずそのまま体内に移植すると腫瘍になる)。腫瘍を作った生物の生存率は下がるので、仮に弱酸性で細胞が多能性を獲得する生物が誕生したとしても、その生物は進化において排除されるはずである。」

この主張はちょっと根拠が弱いように感じる。もし我々の体内でSTAP細胞化が起こっていると仮定するなら4. の指摘は正しい。しかし、今回の論文は体内の生理的な状況でSTAP細胞化が起こることを示した論文ではないし、おそらくそれは起こらないだろうというのは経験的に想像がつく。小保方さんらが示したのは、あくまで細胞を体外に取り出して試験管の中で起こした現象だ。体の中と試験管の中の環境は月とスッポンほど違う。片方で起こる現象が必ず片方でも起こるという保証は全くない。

5. の主張はDr. Vacantiも頭を抱えている所じゃないかと予想している。2011年にはマウスでSTAP細胞の作製に成功していたと彼らは言っているので、3年もの間にもっとも重要なヒト細胞のSTAP細胞化が何故できないんだというのは、誰しも感じる疑問だと思う。これに関しては今後の報告を待つしかないが、マウスの細胞でSTAP細胞化が確立できるなら必ずしも悲観することでは無い。何故マウスで成功してヒトで成功しないのか、理由を突き止めればそれをもとに改善策を考えられる。それを繰り返していればいつかは成功するかもしれないからだ。



STAP細胞の作製は、現在世界中の幹細胞研究室で追試が行われている所だろう。Dr. Knoepflerはこれらの追試の結果を共有するため、研究者が最新の実験結果を共有できるページを立ち上げた。
http://www.ipscell.com/stap-new-data/

2月13日現在6つの実験結果が報告され、どれもSTAP細胞の作製に失敗しているようだ。



いずれにしろ、このようなパラダイムシフトに重要なことは、実験結果が誰でも再現可能なことだ。iPS細胞は世界中で再現可能だったので研究が進み、臨床応用にまで至った。STAP細胞に関しても、おそらく遅くとも2か月後には再現可能かそうでないのかの答えは出ているだろう。

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華の金曜日を歌う欧米文化:メディアに現れる潜在的な憧憬

先日の記事で紹介した、グラミー賞2014最優秀楽曲受賞曲でもあるこの曲





歌詞の訳:およげ!対訳くん: Royals ロード (Lorde)

映画やドラマで描かれるきらびやかな生活と、至って地味な現実生活とのギャップを指摘し、映画で描かれるような華やかさとは違う大事なものがあるんだと歌っている。

この曲の前提条件として、人々が映画やドラマで描かれるようなド派手な生活に憧憬を抱いているという事実があるのだと思う。しかしながら、ちょうどRoyalsで歌われているような欧米諸国における状況と、我々が置かれている日本の状況は大きく異なるのではないだろうかという疑問は、先日の記事でも少し書いた。



例えば、欧米諸国における"ド派手な生活"に必要不可欠なものとして、"ド派手なパーティー"があるんじゃないかと思う。


例えばKaty PerryのLast Friday Night (T.G.I.F.)という曲。TGIFはThank God It's Fridayの略だ。




Pictures of last night
Ended up online
I'm screwed
Oh well

昨晩の写真がネットにうpされちまった!
やっちまった~
まあいいか


と一節で歌われるこの曲、どんな曲かはMusic Videoを見るとよく分かると思う。
欧米のポップスではこんな感じのパーティーを歌った曲、もしくはそれを示唆するような歌詞は頻繁に見つけられる。

日本ではどうだろう。

youtubeの検索に、英語で"party"と入れるとポップソングがゴロゴロ出て来るのに対し、日本語で"パーティー"と入れてもヒットソングは全然出てこない。ここ数年の年間CD売上ランキングを見ても、上に貼った曲のようにド派手なパーティーを歌った曲は見つけられない。

欧米文化におけるパーティーに相当するようなものは日本では存在しないのだろうか。自分の経験に照らし合わせてみると、飲み会でバカ騒ぎをするというのは当然経験としてあるし、多くの人に取っても仲間と飲み会を楽しむというのは生活の一部として存在しているだろう。しかし、それが"欧米におけるParty"のように、ポップソングの歌詞に頻繁に現れることが無いことを考えると、"飲み会"というのは日本人にとって普遍的な風俗ではないのだろうか・・・。いや、飲み会が普遍的な風俗ではないという説は納得できない。

もしかしたら、映画やポップソングで描かれるような華やかな生活に人々が憧憬を抱いているというよりも、人々が憧憬を抱くものが映画やポップソングの中に描かれるのではないだろうか。欧米人の文化として、週末にド派手なパーティーでどんちゃん騒ぎをするというのが潜在的な憧れとしてあり、それゆえにこぞってメディアでそのような像が描かれるのかもしれない。

そうすると、日本人が文化として潜在的に憧憬を抱いているものは何だろう。
このへんは諸説あると思うが、代表的なのは以下のようなものではないだろうか。




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もちろん、メディアに現れるモチーフは上に挙げたようなもの以外にもたくさんあるだろうし、それらの多くは欧米の文化の中でも共有されうるものだろう。

しかしながら、この誰が得するのか分からない支離滅裂な投稿で以下のような結論にたどり着いたことを成果として主張したい。


グラミー賞2014最優秀楽曲を受賞したLordeのRoyalsの歌詞は、


日本に当てはめると・・・




「リア充爆発しろ!」








STAP細胞関連の情報を読み解く: 科学立国とは?

STAP細胞について、興味深い記事を見つけたので紹介したい。

1月30日:酸浴による体細胞リプログラミング(1月30日Nature誌掲載論文

記事はNPO法人であるAASJ(オール・アバウト・サイエンス・ジャパン)のコンテンツ、科学報道ウォッチで1月30日に公開となったものだ。AASJの代表者で、記事の筆者でもある西川伸一氏は熊本大医学部教授や京大医学系研究科教授、理研グループリーダーなどを歴任し、免疫学や発生学、幹細胞生物学などの分野で第一線の活躍をしてきた研究者だ。定年で研究の現場を退いた後も、このAASJ等を通して精力的に活動を行っている。ちなみに西川氏は小保方晴子氏が現在勤める神戸理研で昨年まで研究を行っており、今回の論文の関係者でもあるらしい。以下気になったところを引用してみたい。

この論文には私も思い出が深い。最初にこの話を聞いたのは仕事でイスラエルに滞在していた約3年前の事で、メールでの依頼に応じて論文のレフェリーコメントにどう答えればいいのかなどボストンのバカンティさんと電話で話をした。その後帰国してから、若山研に寄宿して実験をしていた小保方さんと出会って論文についてアドバイスをした。話を詳しく聞いて研究の内容についてももちろん驚いたが、小保方さんと言う人物にも強い印象を受けた。特に最初の論文のドラフトを読んだ時、自分の気持ちをそのままぶつけた初々しい書き様に、普通の研究者とは違うことを確信した。その時と比べると、今回久しぶりに目にした論文は堂々とした成熟した論文に変わっていた。苦労が実ってよかったと我が事のように思う。

3年前というと2011年で、小保方さんは震災をきっかけに日本に留まり、山梨大の若山教授に協力を仰いだとどこかの記事で見たので、その時期と一致する。その頃には、今回発表された論文の前段階にあたるSTAP細胞の論文が既に投稿されており、論文を評価するレビュアー(レフェリー)から返ってきた(おそらく辛辣な)コメントに対して、どうやって答えればいいかDr. Vacantiから相談を受けたと語っている。

先月に発表されたSTAP細胞に関する2本の論文のうち、1本目の論文は大まかな構造を記すと、

1.酸浴による白血球のリプログラミング

2.リプログラミングされた細胞の培養皿(in vitro)における実験やマウスへの移植実験による特徴づけ

3.キメラマウス作製による多能性の証明

のような構造になっている。このうち、2番目までのデータはおそらくこの時までに揃っていたが、それだけではこの生物学の常識を覆す現象をレビュアーに納得させるには不十分で、小保方さんは若山教授の協力を仰いで更に説得力のあるデータを取ろうとしたのだと予想される。読売新聞による若山教授へのインタビューによると、STAP細胞由来の細胞を持った最初のマウスが生まれたのは2011年の末頃らしいので、おそらく半年以上かけてSTAP細胞を使ったキメラマウス作製に取り組んだのだろう。それから2012から2013年にかけて、多能性・全能性を証明し、2本目の論文との同時投稿という形で、先月発表になったと考えられる。

これだけのことを証明した2本の論文の筆頭著者というだけで、小保方さんの卓越さを証明するには十分だが、西川氏は小保方さんについてさらに"自分の気持ちをそのままぶつけた初々しい書き様に、普通の研究者とは違うことを確信した"とコメントしている。「生物学の歴史を愚弄している」とレビュアーに酷評されてもめげずに信念を貫いて今回の論文を書き上げた、小保方さんの研究者としての資質がここからも読み取れると思う。

西川氏はSTAP細胞発見の驚きについて、専門家として以下のようにコメントしている。

ただ問題は、驚きが論理的な納得に変わらない点だ。おそらくこの点が論文採択までに苦労が強いられた原因だろう(新聞を見ると採択されず泣き明かしたとまで書いてある)。論理的に納得できるようになるには、この現象の背景にあるメカニズムを理解する必要がある。酸や他のストレスでエピジェネティック機構が影響を受ける事は私も想像できる。再現性の高い実験結果である事も十分示せていると思う。しかし、エピジェネティック機構の揺らぎが、なぜ全能性のネットワーク成立に落ち着くのかなど、納得できない点が多い。おそらく体細胞では厳密に押さえられている多能性遺伝子が、酸や様々なストレスで開放され、多能性の転写ネットワーク形成を自然に促すのだろう。

(中略)

何れにしても小保方さんの結果により再認識させられるのは、どの方法でリプログラミングを誘導しようとも、リプログラミング自体が生理的な過程ではないことだ。事実、私たちのゲノムは30億塩基対という膨大な物だ。この30億塩基対のエピジェネティックな状態の細部を思い通りに制御するなど至難の業だ。このため、表面的な転写ネットワークは同じでも、リプログラムのされ方が異なる多様な状態が可能なのだろう。おそらく、今後も様々な状態の全能性・多能性の幹細胞が報告される事だろう。


今回の論文では体細胞を酸に漬けただけで多能性が獲得されるという現象が示されたが、そのメカニズムとしてはまさにブラックボックスだ。西川氏は"リプログラミング自体が生理的な過程ではない"と語っている。"生理的な過程ではない"とはどういうことかというと、我々の体で普段絶対に起こらないということだ。お酢を飲んでも体内でSTAP細胞が誘導されないことからも分かるように、多能性の獲得は普段体の組織の中で厳密にコントロールされ、絶対に起こらないと考えられてきた。そのリプログラミングが、酸浴によるストレスや、おそらく体外に取り出して培養することによって生じる微小環境の変化により生じる。これがどのような機構で生じるか解明することが、今後の再生医療の発展のためにも重要だ。

続いて西川氏は今後の競争について以下のように語っている。

メディアも競争について気になるなら、特許が日本かアメリカかを調べた方がいい。元々この仕事は小保方さんがバカンティ研で一人で始めた研究だ。ハーバードでもプレス発表があった。我が国独自の技術だなどと考えると、ぬか喜びになるかもしれない。もちろん、特許が全てアメリカに握られていたとしても、小保方さんを我が国にリクルートできた事の方が大事だ。優秀な人材確保は人口の減り続ける我が国に取っては急務だ。

(中略)

我が国の助成方針や報道の仕方を見ていて一つ懸念するのは、小保方さん自身が「ヒトSTAPの樹立を急ごう」などと臨床応用を目指した研究に移ってしまう事だ。幸い小保方さんを採用するときのインタビューで、彼女は私たち凡人の頭では思いつかない研究計画を提案していたので安心している。日の目を見なかったが最初のドラフトで「生への欲求は生物の本能だ」と、なぜ細胞にストレスを与える気になったのかの説明を始める感性は尋常ではない。彼女の様な人に自由にやってもらう事こそ我が国のためになる。小保方さんも是非国民の期待を手玉に取りながら、気の向くままに研究をして行って欲しいと願っている。


これはあまりメディアで取り上げられていないことなのだが、STAP細胞に関する特許はハーバード大のDr.Vacantiのグループに属する。もちろんその貢献者の中に小保方さんを含めた日本人は存在するが、特許自体はアメリカのものとなるだろう。もちろんiPS細胞の特許に関して京大が行ったように、ハーバード大もSTAP細胞に関して研究が進むように特許料を割安に抑える可能性はある。ただし重要なことは、この記事でも紹介したように、STAP細胞の技術は小保方さんの専門技術ではなく、ハーバード大のグループは既にサルやヒトを使ってデータを取り始めているということだ。さらには、先週論文が発表された時点で、おそらく全世界の幹細胞研究のグループが小保方さんの実験の追試を始めていると考えられ、今後STAP細胞に関しても激しい競争が予想される。その中で西川氏は、小保方さんを理研に雇うことで貴重な人材を国内に留めておくことができたと語っている。

面白いことに、西川氏は神戸理研で小保方さんを採用するときの面接官でもあったようで、その面接でも彼女の卓越さが垣間見られたようだ。STAP細胞のような成果が出てくると、すぐに臨床応用へと目が向き、国の研究予算も臨床応用を意識したプロジェクトへと傾きがちとなる。もちろん臨床応用も大事なことではあるが、基礎研究無くして臨床応用は無い。"細胞を酸につけて多能性を獲得させる"といった一見突飛に見えるアイデアでも(おそらく2週間前に言っても誰も信じなかっただろう)、今回のように大きな成果となることがある。すぐには臨床に結びつかないような基礎研究でも、きちんと支援していくことが科学立国として重要なことだ。

この問題に関して、読売新聞による若山教授へのインタビューでは以下のように語られてもいる。

――今や全国のヒロインとなった小保方さんに続く若手研究者は今後出ると思うか。

 「彼女は次元が違い、難しいかもしれない。小保方さんのように世紀の大発見をするには誰もがあり得ないと思うことにチャレンジすることが必要だ。でもそれは、若い研究者が長期間、成果を出せなくなる可能性があり、その後の研究者人生を考えればとても危険なこと。トライするのは並大抵の人ではできない」

今回のような常識を覆すような発見を行うには、その当時は非常識に見える研究を行わなければならない。しかし、非常識に見える研究は常人にとって支援の対象とはなりにくいというジレンマがある。研究費を支給する国や、さらに税金を納めている国民に、この点を是非理解してほしいと感じている。臨床研究も大事だが、それだけでは科学立国としては不十分だ。基礎研究無くして科学の発展はありえない。一見役に立たなそうな基礎研究でも長い目で支援していくことが大事だ。


追伸
西川氏が2月23日にニコ生でSTAP細胞の論文を解説してくれるらしい。必見。
「STAP論文徹底解説」

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グラミー賞2014受賞者を調べてみた

発表からだいぶ経ってしまったが、去年もやった手前今年もグラミー賞の主要4部門を受賞したアーティストを紹介してみたい。

グラミー賞2014の受賞者

まず、最優秀レコードと最優秀アルバムを受賞したDaft Punk



このGet Luckyは80年代を思わせるような、なんだか懐かしい音を感じさせる。曲はいたってシンプルなダンスミュージックに聴こえる。

ちなみにこのMusic Videoに出てくる4人組、
daft punk

彼らのうち、Daft Punkと呼ばれるのは、後ろでロボコップみたいなマスクを被ってベースとドラムを演奏している二人だ(本人が入っているという保証は無いが・・・)。彼らはフランス出身のデュオで、最初のアルバムは1997年にリリースされていて、その活動歴は長い。昨年からソニーミュージックエンターテイメントと契約し、リリースしたアルバム「Random Access Memories」が全世界で大ヒットした。

流行のポップソングと比べた時に、彼らの曲は時にシンプル過ぎるように聴こえるかも知れないが、彼らも彼らなりの哲学があってそういう曲を作っている。たぶんその哲学に共感する人が多くいるから世界中で大ヒットしている。
ここに彼らのインタビューが載っているので、気になる人は読んでみるといいと思う。
音楽に感情を取り戻すために DAFT PUNKインタビュー












最優秀新人賞を受賞したMacklemore & Ryan Lewis



このThrift shopという曲は、現時点で約5億再生されている。Thrift shopとはリサイクルショップのことで、要約すると「お金無いから安上がりのリサイクルショップに行くか。リサイクルショップは楽しいな」という感じの曲だ。

曲とはあまり関係ないが、曲の中で「This is fu*king awesome~」と言っているのがやけに耳に残る。しかもawesomeの後に感嘆符!ではなくて"~"(ニョロニョロ棒)を付けたくなる感じで言っている。何でこんなに耳に残るんだろうという理由を考えたら・・・


どうやらその言い方が熱い温泉に肩まで浸かって「うぇ~~い」とうなってる人を連想させるからだという結論に思い至った。

this is awesome












最優秀楽曲を受賞した、LordeのRoyals



Lordeはニュージーランド出身のシンガーソングライターで、なんと曲の発表当時16歳だった。

16歳が書いたということも多少は関係していると考えられるが、この曲はその歌詞が話題になってもいる。訳はこちらのサイトで上手く訳されているので参考にしてほしい。
およげ!対訳くん: Royals ロード (Lorde)

Lordeと同年代であるアメリカの高校生の反応もある。



歌詞はメディアで描かれる青春像と現実の生活とのギャップが発端となっているようだ。日本の高校生くらいといえば、たとえ映画の中ででも派手なパーティーに行ったりクスリをやったりとかはあまり想像できない。日本の映画で描かれる青春像は、学校で繰り広げられるいたって真面目なドラマが多いのではないだろうか。たまに不良のグループ同士が喧嘩する映画とか、不良が東大受験するといったようなドラマはあるが・・・。この曲の状況を日本に当てはめるなら、そういう突飛な映画と現実とのギャップを歌っていると考えれば良いのだろうか・・・いや、それは何か違う気がする。国や文化が変われば、若者の悩みやポップソングを取り巻く環境も変わる。解釈は人それぞれのものということにしておこう。

STAP細胞に関するNew York Timesの記事について

STAP細胞に関するNew York Timesの記事(英語)。

Study Says New Method Could Be a Quicker Source of Stem Cells

今回の論文の共同著者であり、小保方氏のハーバード大学におけるボスでもある、Dr. Charles A. Vacantiのインタビュー等が載っていたので、抜粋して紹介したい。ちなみにこのDr. Charles A. Vacantiは、再生工学の分野では有名人らしく、Vacanti mouseを作った人でもある。Vacanti mouseの写真は、この業界の人なら誰しも見覚えがあるだろう。

以下、僕が適当に抜粋した記事とその訳

__________________________________


Dr. Charles A. Vacanti, director of the laboratories for tissue engineering and regenerative medicine at Brigham and an author of the studies, said the technique could also raise ethical issues because it might provide an easier way than current cloning techniques of creating a duplicate of an animal, or even a person.

Dr. Charles A. Vacanti(ブリガム病院(ボストンにある大きな病院)における組織工学・再生医療研究室の室長であり、今回の研究の著者でもある)は、STAP細胞作製技術は、クローン動物、もしくはクローン人間の作製でさえより簡単に行えるクローニング方法になり得るため、倫理的な問題も引き起こすかもしれないと述べた



Some experts expressed caution, saying more needed to be known about the new approach and that existing techniques for making stem cells had improved markedly in recent years.

“The existing methods are already quite advanced,” said Sheng Ding, a scientist at the University of California, San Francisco, and the affiliated Gladstone Institutes. “It’s too early to say this is better, safer or more practical.”

何人かの専門家は、新しい手法についてよく知ることと、従来の幹細胞作成法も近年著しく向上してきたことについてよく知る必要があると警告した。

「従来の方法も既にかなり進展している」カリフォルニア大学サンフランシスコ校の科学者であるSheng Dingは述べた。「この手法が(iPSなどの)従来の方法より優れていて、安全で実用的と決めるにはまだ早すぎる」




If the technique is to be used to treat patients, it would have to work with cells taken from adult humans, not newborn mice.

Dr. Vacanti said researchers had already replicated the work using adult monkey cells and skin cells from newborn human babies, but not yet from human adults.

もしこの技術が患者の治療に使われるなら、新生児ではなく成人から細胞を取得できなくてはならない。

Dr. Vacantiによると、彼らは既に成熟したサルの細胞と、ヒトの新生児の皮膚細胞からSTAP細胞を作ることに成功しているが、人間の成人からはまだだ。

(訳者注:別の報道では、ヒトの新生児の皮膚から作製したSTAP細胞は、まだきちんと特徴づけできていないと言っている。たぶんDr. VacantiがNYTの記者に誇大広告したか、記者が早とちりしたかのどちらかだろう)



He said the research stemmed from work years ago by his lab and others that appeared to find pluripotent cells in the bodies of adult people or animals. He said he began to suspect that researchers were not actually finding stem cells in the body but rather creating them through the stress from the manipulation of the cells in the laboratory.

It has taken several years of work to demonstrate this. Much of it was done by Haruko Obokata, who started as a graduate student in Dr. Vacanti’s lab and is now a biologist at Riken. She is the lead author of the two papers in Nature.

Dr. Vacantiは、この研究は数年前に彼のラボの研究員らが、成熟したヒトや動物の体から多能性細胞を見つけたように思える仕事から生じた。彼は、研究者らは体内の幹細胞を見つけているのではなく、研究室において細胞を扱う際にかかるストレスによって幹細胞を作りだしているのではないかと疑うようになった。

このことを証明するのに数年の歳月を要した。その証明の大部分は、Dr. Vacantiラボのかつての大学院生で現在は理研の研究者である小保方晴子氏によって行われた。彼女は今回Natureに発表された2本の論文の筆頭著者だ。




The STAP cells, under the right culture conditions, can form material for the placenta, not just the embryo, which might allow an animal to be cloned just by putting some of its STAP cells in a uterus. Dr. Vacanti said that one researcher, whom he declined to name, had already tried that with mice but had not succeeded.

STAP細胞は適切な条件下において、胚だけでなく胎盤を形成することができ、これはSTAP細胞を子宮の中に配置するだけでクローン動物ができる可能性を示唆している。Dr. Vacantiは、とある研究者(名前は明かさなかったが)がすでにマウスでその実験を行ったが、まだ成功していないと語った。



抜粋終わり________________________




気になった点
すでに成熟したサルでSTAP細胞を使った治療実験に成功しているらしい
昨日の読売のニュースでも報道されていたが、ハーバード大のグループは既に人工的に脊椎損傷を起こしたサルから、STAP細胞を作製して下半身不随の治療に成功しているらしい。小保方氏の論文では、実験結果はすべてマウスから得られたもので、しかも生後一週間以内のマウスから細胞を取らなければいけないという点が第一のネックだった。論文発表の直後のタイミングで、ハーバード大のグループが論文として未発表の情報を出してきたのは、他のグループを牽制する狙いがあるとみられる。「我々は既に君たちのこんなに先を言ってるから競争しても無駄だよ」とライバルをひるませる作戦だ。

サルは言うまでもなくマウスよりもヒトに近い。サルでSTAP細胞の作製とそれを用いた治療に成功したということは、ヒトでもそれらのことをそう遠くない未来に達成するだろうという気がする。

気になるのは、サルやヒトの細胞を使った研究に、小保方氏をはじめとした日本のグループはそんなに深く関わっていないのではないのかという気配がすること。もちろん、報道で流れてくる情報を元に部外者である自分が予想しているだけなので、実際は違うかもしれない。しかしながら、ハーバード大のグループは小保方氏の貢献に最大限の敬意は払っているが、「今後はこちらで進めさせてもらいますよ」と言っているように見えなくもないのだ。

30歳という若さで今回の発見をした小保方氏は称賛してもしたりないが、今後彼女だけで研究を発展させ、世界との競争に勝っていくのは大変なことだろう。今回の論文の共同著者である山梨大の若山照彦教授は畜産分野で一流の研究者だが、ヒトへの応用研究が得意というわけではないように見える。せっかく見つけた期待の芽だ。外国との競争に負けて手柄を持って行かれるような事態はできれば避けてほしい。幸いにも京都にこの分野で競争力のある大きな研究所があるので、今後は神戸などのグループと協力して分野を推し進めてもらうのが、国民の望むところだろう。


クローン動物が簡単にできてしまうかも?
前回の投稿では触れていなかったが、STAP細胞にはiPS細胞やES細胞には無かったポテンシャルがある。STAP細胞は胎盤を形成することができるのだ。上記のNY Timesの記事中でDr. Vacantiも言及しているが、これはクローン動物、さらにはクローン人間の作製を飛躍的に簡単にするかもしれないことを示唆している。STAP細胞を子宮に入れるだけで子供ができちゃうかも・・・なんて発言もしている(マウスを使った実験ではまだ成功していないらしいが)。クローン人間を作ることが倫理的に許容されることは、我々が生きている間には起こらないと思っているけれども、どっかの国の狂った医師が各国の法律に違反しない公海上でクローン人間を作ろうとしたなんて噂も聞くので、もしかしたら近い将来どこかでクローン人間が生まれてもおかしくないかもしれない。



日本のみならず世界の世間をここまで騒がせたSTAP細胞。騒動の大きさは、それだけ今回の発見のインパクトが大きかったことを表している。みな今後の再生医療の発展に期待しているし、新規治療法を心待ちにしている患者もいる。再生医療の更なる発展を期待している。


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