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一人の作家のつぶやきから考えること

昨日SNSでこんなものが目に入ってきた。

現役作家の、プロを辞める理由が他人事に思えない件-togetter

転がる石のように。 -上と同じ内容を本人がまとめたブログ記事


作家の橋本紡さんが、小説を書くのを辞めようとする理由を書いている。

いくつか印象に残る言葉があったので引用してみる


作家というのは、崖にかかった丸太橋を、何度も何度も渡るような仕事だからだ。長い作品を書くたび、僕たちは丸太橋に挑む。丸太橋は細く、でこぼこで、たいていは渡りきれない。落ちてしまう。

大半の人は、そもそも丸太橋を渡ろうとはしない。百人が足をかけても、そのうち九十九人は落ちると知っているからだ。まっとうな感覚を持っている人は、近づくことさえ避ける。けれど、作家という愚かな生き物は、なにも考えず、丸太橋を渡ろうとする。落ちることなんて考えていない。僕たちは賢明ではない。ひたすらに愚かなのだ。



また、本が読まれなくなっていることについても

僕が抱く悲しみのひとつは、そういった状況だ。小説は以前ほど、必要とされていない。自分の表現ができればいいと考えている作家もいるけれど、僕はそうではない。僕は読まれたい。伝えたい。部数とは、読者の数でもある。言葉、思いが、伝わる相手の数だ。どんどん本が読まれなくなっていく現実は、ひとりの書き手として、とてもつらいことだった。そして、それが不可逆的な過程であることは、よくわかっていた。




正直に言うと、これを読む前は橋本紡さんの名前すら知らなかったが、
このまとめやブログを読んで今度彼の作品を読んでみたいと思った。
橋本紡さんの小説を書くことに対する思いがよく伝わってきた。
橋本紡さんがいかに書くということに全身全霊で取り組んできたかが分かった。

僕が小説を読む理由は、彼らが丸太橋を渡っている姿に感動したり共感したりするからだ。
そこには作家の生き方がよく表れる
彼らがどのように生きてきたのか-丸太橋を渡るのか-を知れることが小説を読むことの楽しみだ。
だからそこまで強い意志を持って書かれた作品なら是非とも読んでみたい。

同時に出版業界が衰退して、そのような作品に触れられる機会が減ってしまうのは、
とても残念なことだ。
それが社会の構造的な問題なのか、時代の変化の問題なのか、
それともその両方なのかというのは僕にはわからない。

僕は家人を得て、子供も得た。一男一女。喧嘩しながらも、苛々しながらも、悪くない日々だ。チョコレートをたっぷり味わっている。けれど、世の中は、そうではない。学生時代の友人たちの多くは、結婚していない。もちろん子供もいない。公的な統計によると、日本の二十代、三十代の三割ほどは、未婚のまま生きていくそうだ。子供を持つ人間は半分くらい。仕事柄、作家や、書店員との付きあいも多いけれど、彼らに絞ってみると、割合はさらに高くなるのではないか。僕自身がそうだったように、本好きは人間関係があまり上手じゃない。この国、日本においては、子供を持たない人々が多数派になろうとしている。

傾向は鮮明だ。市場は嘘をつかない。現実を反映する。男女の関係を描いた小説は今、まったく売れなくなった。家族を描いた小説は今、まったく売れなくなった。大人を描いた小説は今、まったく売れなった。



例えば僕個人が、他人との心の底からの深い交流を渇望しているかと聞かれると、
そうではないような気がするし、
とは言っても他人との交流は社会が存在する上で必ず生じるものだし、
たとえ今の自分のリアルと一致しなくても、その作品が良作なら読んでみたいと思う。

もちろん僕一人がそう思ったところで、彼のような作家が救われるわけではない。
時代は変わっているのだろうか。
それでも、少子化にも関わらずドラえもんの映画は毎年動員数を伸ばしている
なんていうのを聞くと、それは作家の言い訳のようにも聞こえてしまう。

もう二年くらい前に書いたことだけれど、ポップカルチャーは消費されていくものだ。僕たちは、それを恐れるべきではない。時代についていけなくなった表現者は、ただ消えればいいのだ。社会を恨んでも仕方ない。その社会がたとえ、行き詰まりに向かっていたとしても。恨むべきなのは、社会を変えられなかった自分だ。至らなかった自分だ。誰かのせいにはできない。 



そこには、

「たくさんの人に読まれたい」

という思いと、

「時代に迎合するような小説では意味が無い」

というジレンマがある。

そして橋本紡さんは、表現者として時代遅れになったなら消える道しかないという。
確かにそうなのかもしれないが、
やはり彼らのような表現者の活躍する場がなくなっていくのはとても悲しいことだ。
具体的なアイデアは湧かないが、
また彼らのような作家が脚光を浴びれるような、
時代に合ったシステムやサービスが生まれることを願う。

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Author: あぴと
生命科学の研究者。ポスドク。東京という街が好きです。
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生命科学、基礎医学、進化生物学、英語、読書、美術、音楽

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