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国立科学博物館のすすめ ~地球館編~

もしあなたが理系の人間であるなら、国立科学博物館を訪れない理由は無い。そこは理系の心を揺さぶる良質な展示物に溢れている。理系に進んだ人の誰もが幼い時に持ったであろう、「なぜ世界はこんなにも不思議なんだろう?」という根源的な問いを思い出させてくれる。人類はその根源的な問いを追求し、科学を発展させてきた。そしてこれから発展させるのが我々・あなたたちだ。国立科学博物館に行けば、いつだって新たな疑問の発見がある。

もしあなたが文系の人間であるなら、国立科学博物館を訪れない理由は無い。あなたを含めた人間は、地球上のあらゆる動物達と同じ生物でありながら、同時に他の生物とは違う特徴を持っている。なぜ人類は他の生物と違い、高度な科学と社会を持つことができたのだろうかという問いは、人間の社会を考える上でも当然生じてくる疑問だろう。国立科学博物館には地球における生物の歴史が展示され、そこからどのようにして人類が生まれてきたかのヒントがある。人としてそれらについて考え、知っておくことは決して損ではないだろう。

要するに、
みんな国立科学博物館に行くべき


国立科学博物館は、上野公園の中にあり、以前紹介した国立西洋美術館や上野に存在するその他の美術館・博物館群のひとつである。



期間限定の特別展も開かれているが、国立科学博物館の特徴は何と言っても常設展の充実である。特別展も毎回質の高いものが開かれているが、科学の展示物としての質・量ともに常設展はいつだって特別展を凌駕すると思う。専門的に生物学を研究している博士学生が何度訪れても飽きないくらい質の高い展示物がたくさんある。ソースは俺。もちろん、専門的に研究をしていない人でも楽しめるような解説もある。まさに大人から子供まで楽しめると思う。

国立科学博物館の常設展には「地球館」と「日本館」がある。展示を一つ一つ噛み砕きながらゆっくり回ると、それぞれを回るのに半日ずつかかる。それくらい量がある。この投稿ではひとまず「地球館」を紹介してみたい。


地球館の案内


地下三階から地上3階まで6フロアある。

すべてを紹介していると長くなるので、ここでは僕のおすすめであるB2階「地球環境の変動と生物の進化」と3階「大地を駆ける生命」を紹介する。


B2階の「地球環境の変動と生物の進化」では、地球の誕生から生物の誕生、そして生物が辿ってきた進化の歴史が体系的に貴重な化石や模型と共に展示してある。

地球ができたのはおよそ46億年前。およそ40億年前に海ができたとされ、そのころ最初の生物が生まれたとされる。最初の生物がどんなものだったかは確定的な情報は無いが、おそらく海底のマグマ噴出口のようなところで生活する好熱性のバクテリアだったと考えられている。この時何かのきっかけで誕生した原始的な生物が、40億年という長い長い年月をかけて、現在見られる多種多様な生物に進化してきた。このことは考えれば考えるほど不思議なことで、地球上に見られるありとあらゆる生物~すべての動物、魚、虫、草花、樹木、微生物~がこの時生じたたった一種類の原始的な生物から進化してきたのだ。

しかし、40億年前に生じた生命は、その後現在に至るまでのほとんどの期間を海の中で原始的な微生物のまま過ごす。細胞の中に核などの小器官を持つ真核生物が誕生したと考えられるのがおよそ20億年前で、最初の生物から20億年かかっている。それから多細胞生物が出現したのが約10億年前と考えられているから、真核生物から多細胞生物までさらに10億年かかっている。その後徐々に大型化する種が現れ、6億年くらい前になると脊椎動物の化石が見られるようになる。

B2階の展示では、各年代の化石や資料が年代順に展示されている。

30億年頃前に増加した、光合成によってエネルギーを得るシアノバクテリアが形成するストロマトライト
 


4億年前に存在した板皮魚類の頭部の復元模型

写真だと大きさがわかり辛いかも知れないが、この頭部、幅60cm奥行150cmくらいはあるんじゃないだろうか。これが4億年前の海を泳いでいた。

4億年前に植物が陸上に進出し、追って両生類が陸上に進出する。海・陸両方でさらに多様性を増していた生物だが、2.5億年前に生物史上最大の大量絶滅が起こる。その原因は今も盛んに研究されていて明確な答えは出ていない。この時に地球上の90%近くの生物種が絶滅したとされている。

しかし、大量絶滅というのは、生物にとって進化のきっかけとなるイベントだ。進化生物学的には、過酷な環境により大量絶滅が起こる状態は「淘汰圧」が生物に強くかかっている状態でもある。生物はその進化の過程でいくつもの大量絶滅を繰り返して現在の形質を獲得してきた。2.5億年前の大量絶滅の後にもより多様性を増した生物が再び地球上に現れる。その中には巨大な爬虫類・恐竜や哺乳類も含まれる。

これはB1階の展示だが、恐竜の骨格の復元模型がある。



その恐竜も6500年前の隕石の衝突に伴う気候変動で絶滅してしまう。

恐竜が絶滅すると、今度は哺乳類の大型化が始まる。B2階ではそんな過去の大型生物の骨格模型がある。哺乳類ではないが、個人的なお気に入りはこのカメ。


絶滅してしまった生物は、このような化石や標本でしかその姿を見ることができない。それが実際に生きていた姿は、せいぜい我々の想像の中で再現することしかできない。このカメが古代の海を泳いでいる姿はどんなものだったのだろうか。そんな想像を巡らす、ただそれだけのことなのだけど、何故だかそんな想像は心をわくわくさせる。

生物の進化を辿れるB2階の展示の中でも、結構なスペースが割かれているのが、「ヒトの進化」だ。


所謂ヒトであるホモ・サピエンスが進化の文脈でどのように生まれてきたのか、分かりやすく時系列に沿って展示されている。例えば上の写真、他の哺乳類では頭部の中で突出している顎の骨が、霊長類において突出が無くなり、さらに脳室の容量が大きくなっているのが簡単に見て取れる。

現存する生物の中で、最もヒトに近い生物はチンパンジーだと言われている。ヒトの祖先はチンパンジーの祖先から約500万年前に別れ、それから二足歩行と脳の容量増加を特徴としたヒトの進化が始まる。最初の‘ホモ属’であるホモ・ハビリスが生まれたのは約200万年前だとされる。


興味深いことにヒトの進化は常にアフリカで起こったとされる。北京原人やジャワ原人として知られるホモ・エレクトスはユーラシア大陸に進出していたことが知られているが、ではホモ・エレクトスが今ユーラシア大陸に住んでいるヒトの祖先かというとそうではない。ホモ・エレクトスは数万年前に滅び、その前にアフリカで進化していたホモ・サピエンスが新たにユーラシア大陸に進出し、その後全世界に生息域を広げていく。

ホモ属として現代まで生き残ったのはホモ・サピエンスだけで、チンパンジーより高度な脳を持っているはずのホモ・エレクトスやホモ・ネアンデルタールは滅びた。チンパンジーは現代まで生き残っているにも関わらずだ。それらの旧人類とヒトとの間にどんな違いがあったのかというのは非常に興味深い。もはやそれを知るすべは無いのかもしれないが。

写真は数万年前までヨーロッパで生きていて、ホモ・サピエンスと同等以上の脳容量を持ったホモ・ネアンデルタール


ホモ・サピエンスが進化し、世界中に進出しだしたのは7万年前で、約1万年前からエジプト文明などの現代にも残る文明の発展が始まる。ホモ・サピエンスが誕生した当時の我々の祖先は、サルに毛が生えたような生活をしていたんじゃないかと思う。それが現代までに科学技術と文化を発展させ、今の人類に至る。当然のことなのかもしれないが、改めて進化の流れを踏まえて考えると、とてつもないことだと思う。



地球館の展示において、もう一つ強烈なのが、3階にある「大地を駆ける生命」だ。ここでは一つのホールに世界中から集められた様々な生物の固定標本が展示してある。もちろん生きているわけではないが、世界に広がる生物の多様性を感じられる空間だ。本当に圧巻なので、ぜひ一度訪れてみてほしい。




ここで紹介できた展示は、国立科学博物館・地球館の展示の中でもごく一部だ。実際に行ってみると、より多種多様な題材に関する質の高い資料がたくさん展示されている。科学や生き物が好きな人なら誰でも楽しめると思う。将来自分に子供ができたら頻繁に連れて行くだろう。

関連投稿
国立科学博物館のすすめ ~日本館編~

リニューアルした国立科学博物館の地球館


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