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「風立ちぬ」を見た感想・ネタバレあり

ジブリの最新作「風立ちぬ」を今更ながら見てきた。その感想を書きたいと思う。もろにネタバレがあります。ネタバレされたくない人は見ないように。
































見終わって最初に思った感想は、これはまさに青春を描いた映画だということ。映画は飛行機の設計士になることを夢見る少年時代の堀越二郎のシーンから始まる。二郎は大学に入っても熱心に勉強し、期待される優秀な新人として飛行機製造会社に入社し、ついに自分が夢描いていた飛行機を完成させる。その過程で震災の時に出会った女性・里見菜穂子と運命的な再会を果たす。菜穂子は結核を患っていたが、二郎は構わず菜穂子を愛し、束の間の幸せな時間を送る。

仕事と恋愛、それぞれに全力を尽くして生きる。これはまさに青春ではないか。

しかし、既に映画を見た人は上のようなまとめ方に違和感を覚えるだろう。それは当然の反応なのだけど、もうちょっと僕の見方を説明させてほしい。

青春というのは人生で一度きりで、しかもその時間は限られている。生きている間ずっと青春のように過ごすというのは不可能で、青春には必ず終わりがある。しかしながら、青春というのは終わりがあるからこそ、その特殊性と美しさが強調される。もし青春がずっと続くものなら、人生における普遍的な物としてその価値は地に落ちるだろう。

美しさ。これは劇中で繰り返し用いられるこの映画のキーワードだ。

劇中で「美しい」物として描かれるのは主に2つ。「飛行機」と「菜穂子」だ。

二郎は劇中で繰り返し「僕は美しい飛行機が作りたいんだ」ということを言っている。戦争や戦闘機には興味が無かった。美しい飛行機を作るということはまさに二郎の夢であり、そのために夢中になって仕事をしている。そして最後にはプロジェクトリーダーとして飛行機を完成させた。

これらの出来事は、二郎の人生における絶頂期として描かれている。二郎は序盤の夢の中で、尊敬するイタリアの設計士カプローニから「創造的人生の持ち時間は10年だ」と教えられる。そして終盤の夢の中ではカプローニから「君の10年はどうだったかい?」と聞かれる。二郎は映画の中で、自分が輝ける時間に期限があるのを知っていて、その期間にひたすら仕事に取り込むのだ。

二郎の夢のシーンは何回も出てくるが、印象的だったのは多くの夢で飛行機が落ちたり空中分解して目が覚めることだ。二郎がズタズタになった戦闘機の前で立ちすくむシーンもある。これらのシーンは、二郎の青春における「いずれ来る終わり」を暗示しているように思える。飛行機は常に墜落や爆撃の危険性を持ちながら飛ぶ。二郎は常に終わりを予感しながら、自分の夢を叶えるために仕事をしている。



同様のことは菜穂子との関係にもあてはめられる。菜穂子が喀血した時点で、菜穂子の結核が相当進行してしまっていることを二郎は知っていたはずで、それは菜穂子の父との会話からも見て取れる。だから菜穂子が療養所から抜け出して来て一緒に生活を始める時も、2人は最初から終わりを予感していたと考えられる。黒川から菜穂子を療養所へ返さないのは君のエゴイズムではないのかと問われ、「僕たちには時間が無いのです。覚悟しています。」と言い、菜穂子のことを思って涙を流す加代に対して「僕たちは一日一日を大切に生きているんだよ。」と言う。覚悟というのは菜穂子の死のことだろう。菜穂子は自分の先が長くないこと悟り、僅かな間だけでも美しい姿を二郎に見せに来たのだ。二郎もそれを予感し、すぐに結婚式を挙げて彼なりに菜穂子を愛そうとする。

二郎が設計図に向かって夢中になっているシーンは映画を象徴するように何回も登場する。また、一見して恋愛に関しては奥手に見える二郎が、「綺麗だよ」と何度も語り掛け、情熱的かつ真っ直ぐに菜穂子を愛するシーンも印象的だ。二郎はこれらのことに限りがあることを知り、彼のすべてを捧げる。劇中で二郎とカストルプと菜穂子の父で歌うドイツ語の歌「ただ一度だけ」の歌詞がこれらのことを象徴しているように思う。

僕が受けた映画のエッセンスをまとめると、青春の一回性の美しさとでも言えるだろうか。「終わり」に着目するなら青春の一回性の残酷さとも言えるかもしれない。宮崎駿はこれで引退すると言っているけれども、彼が長年夢中で取り組んできた青春を最後に映画にしたのかもしれないと思っている。

「風立ちぬ」を見た感想その2に続く

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