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[小説] 「半島を出よ」 村上龍

これだけの物語を書き上げるのに、いったいどれくらいの労力が掛かるのだろうか。それはただ受動的に読んでいる立場では決して想像もつかない。この本は小説という形を取りながら、さながら現代日本を批評する新書のようであり、一方で多くの人々の生い立ちを辿っていくドキュメンタリーのようでもある。それらの要素が物語の至る所に散りばめられ、非常に読み応えのある作品になっている。大作だと思う。

設定は2011年の日本(小説が発表されたのは2005年だ)。北朝鮮の反乱軍と名乗る武装ゲリラが突如福岡を占領する。彼らは福岡の人々を人質とし、武力を盾に北朝鮮流の統治を開始する。無能な日本政府は突然の襲来に大した対策を取ることもできず、本州へのテロを防ぐために九州全体を封鎖してしまう。本国から12万人の援軍を呼び込み、本格的な独立を目指そうとする北朝鮮ゲリラと、それに巻き込まれ、対峙する福岡の人々、そして密かに北朝鮮ゲリラの転覆を試みる若者達が描かれる。

物語は多数の章からなり、それぞれの章で別々の登場人物が語り手となる。対峙する双方の主観によって物語を語ることにより、多面的に物を見せると同時に、それが現代社会の問題点を浮き彫りにするような構造になっている。驚いたのは、北朝鮮の兵士も語り手になっている所だ。言語も環境も思想体系も全く異なる国の人物の視点に立って物語を語ること、それがどんなに難しいことかというのは冒頭にも書いたように素人の想像を絶するだろう。村上龍はあとがきで「そんなことができるはずがないと思って書き始めた」と書いているが、北朝鮮の人物がなんと生き生きと書かれていることだろう。素晴らしい。拍手。

半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫)半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫)
(2007/08)
村上 龍

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半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)
(2007/08)
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生命科学の研究者。ポスドク。東京という街が好きです。
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