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STAP細胞に関するNew York Timesの記事について

STAP細胞に関するNew York Timesの記事(英語)。

Study Says New Method Could Be a Quicker Source of Stem Cells

今回の論文の共同著者であり、小保方氏のハーバード大学におけるボスでもある、Dr. Charles A. Vacantiのインタビュー等が載っていたので、抜粋して紹介したい。ちなみにこのDr. Charles A. Vacantiは、再生工学の分野では有名人らしく、Vacanti mouseを作った人でもある。Vacanti mouseの写真は、この業界の人なら誰しも見覚えがあるだろう。

以下、僕が適当に抜粋した記事とその訳

__________________________________


Dr. Charles A. Vacanti, director of the laboratories for tissue engineering and regenerative medicine at Brigham and an author of the studies, said the technique could also raise ethical issues because it might provide an easier way than current cloning techniques of creating a duplicate of an animal, or even a person.

Dr. Charles A. Vacanti(ブリガム病院(ボストンにある大きな病院)における組織工学・再生医療研究室の室長であり、今回の研究の著者でもある)は、STAP細胞作製技術は、クローン動物、もしくはクローン人間の作製でさえより簡単に行えるクローニング方法になり得るため、倫理的な問題も引き起こすかもしれないと述べた



Some experts expressed caution, saying more needed to be known about the new approach and that existing techniques for making stem cells had improved markedly in recent years.

“The existing methods are already quite advanced,” said Sheng Ding, a scientist at the University of California, San Francisco, and the affiliated Gladstone Institutes. “It’s too early to say this is better, safer or more practical.”

何人かの専門家は、新しい手法についてよく知ることと、従来の幹細胞作成法も近年著しく向上してきたことについてよく知る必要があると警告した。

「従来の方法も既にかなり進展している」カリフォルニア大学サンフランシスコ校の科学者であるSheng Dingは述べた。「この手法が(iPSなどの)従来の方法より優れていて、安全で実用的と決めるにはまだ早すぎる」




If the technique is to be used to treat patients, it would have to work with cells taken from adult humans, not newborn mice.

Dr. Vacanti said researchers had already replicated the work using adult monkey cells and skin cells from newborn human babies, but not yet from human adults.

もしこの技術が患者の治療に使われるなら、新生児ではなく成人から細胞を取得できなくてはならない。

Dr. Vacantiによると、彼らは既に成熟したサルの細胞と、ヒトの新生児の皮膚細胞からSTAP細胞を作ることに成功しているが、人間の成人からはまだだ。

(訳者注:別の報道では、ヒトの新生児の皮膚から作製したSTAP細胞は、まだきちんと特徴づけできていないと言っている。たぶんDr. VacantiがNYTの記者に誇大広告したか、記者が早とちりしたかのどちらかだろう)



He said the research stemmed from work years ago by his lab and others that appeared to find pluripotent cells in the bodies of adult people or animals. He said he began to suspect that researchers were not actually finding stem cells in the body but rather creating them through the stress from the manipulation of the cells in the laboratory.

It has taken several years of work to demonstrate this. Much of it was done by Haruko Obokata, who started as a graduate student in Dr. Vacanti’s lab and is now a biologist at Riken. She is the lead author of the two papers in Nature.

Dr. Vacantiは、この研究は数年前に彼のラボの研究員らが、成熟したヒトや動物の体から多能性細胞を見つけたように思える仕事から生じた。彼は、研究者らは体内の幹細胞を見つけているのではなく、研究室において細胞を扱う際にかかるストレスによって幹細胞を作りだしているのではないかと疑うようになった。

このことを証明するのに数年の歳月を要した。その証明の大部分は、Dr. Vacantiラボのかつての大学院生で現在は理研の研究者である小保方晴子氏によって行われた。彼女は今回Natureに発表された2本の論文の筆頭著者だ。




The STAP cells, under the right culture conditions, can form material for the placenta, not just the embryo, which might allow an animal to be cloned just by putting some of its STAP cells in a uterus. Dr. Vacanti said that one researcher, whom he declined to name, had already tried that with mice but had not succeeded.

STAP細胞は適切な条件下において、胚だけでなく胎盤を形成することができ、これはSTAP細胞を子宮の中に配置するだけでクローン動物ができる可能性を示唆している。Dr. Vacantiは、とある研究者(名前は明かさなかったが)がすでにマウスでその実験を行ったが、まだ成功していないと語った。



抜粋終わり________________________




気になった点
すでに成熟したサルでSTAP細胞を使った治療実験に成功しているらしい
昨日の読売のニュースでも報道されていたが、ハーバード大のグループは既に人工的に脊椎損傷を起こしたサルから、STAP細胞を作製して下半身不随の治療に成功しているらしい。小保方氏の論文では、実験結果はすべてマウスから得られたもので、しかも生後一週間以内のマウスから細胞を取らなければいけないという点が第一のネックだった。論文発表の直後のタイミングで、ハーバード大のグループが論文として未発表の情報を出してきたのは、他のグループを牽制する狙いがあるとみられる。「我々は既に君たちのこんなに先を言ってるから競争しても無駄だよ」とライバルをひるませる作戦だ。

サルは言うまでもなくマウスよりもヒトに近い。サルでSTAP細胞の作製とそれを用いた治療に成功したということは、ヒトでもそれらのことをそう遠くない未来に達成するだろうという気がする。

気になるのは、サルやヒトの細胞を使った研究に、小保方氏をはじめとした日本のグループはそんなに深く関わっていないのではないのかという気配がすること。もちろん、報道で流れてくる情報を元に部外者である自分が予想しているだけなので、実際は違うかもしれない。しかしながら、ハーバード大のグループは小保方氏の貢献に最大限の敬意は払っているが、「今後はこちらで進めさせてもらいますよ」と言っているように見えなくもないのだ。

30歳という若さで今回の発見をした小保方氏は称賛してもしたりないが、今後彼女だけで研究を発展させ、世界との競争に勝っていくのは大変なことだろう。今回の論文の共同著者である山梨大の若山照彦教授は畜産分野で一流の研究者だが、ヒトへの応用研究が得意というわけではないように見える。せっかく見つけた期待の芽だ。外国との競争に負けて手柄を持って行かれるような事態はできれば避けてほしい。幸いにも京都にこの分野で競争力のある大きな研究所があるので、今後は神戸などのグループと協力して分野を推し進めてもらうのが、国民の望むところだろう。


クローン動物が簡単にできてしまうかも?
前回の投稿では触れていなかったが、STAP細胞にはiPS細胞やES細胞には無かったポテンシャルがある。STAP細胞は胎盤を形成することができるのだ。上記のNY Timesの記事中でDr. Vacantiも言及しているが、これはクローン動物、さらにはクローン人間の作製を飛躍的に簡単にするかもしれないことを示唆している。STAP細胞を子宮に入れるだけで子供ができちゃうかも・・・なんて発言もしている(マウスを使った実験ではまだ成功していないらしいが)。クローン人間を作ることが倫理的に許容されることは、我々が生きている間には起こらないと思っているけれども、どっかの国の狂った医師が各国の法律に違反しない公海上でクローン人間を作ろうとしたなんて噂も聞くので、もしかしたら近い将来どこかでクローン人間が生まれてもおかしくないかもしれない。



日本のみならず世界の世間をここまで騒がせたSTAP細胞。騒動の大きさは、それだけ今回の発見のインパクトが大きかったことを表している。みな今後の再生医療の発展に期待しているし、新規治療法を心待ちにしている患者もいる。再生医療の更なる発展を期待している。


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