東京BLOG

生命科学の研究者のブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

[小説] 「白鯨」 メルヴィル

非常に好奇心をそそる読書だった。「白鯨」は1851年にアメリカ人作家・メルヴィルによって発表された小説だ。アメリカ文学の叙事詩的巨編と巻頭には記されており、複数の出版社から訳が出版されている。

物語は、19世紀に世界で盛んに行われていた捕鯨にまつわる話だ。アメリカから出航した捕鯨船・ピークオッド号が、かつて船長の片足を奪った因縁の白鯨、モビー・ディックを仕留めるための航海を始める。メルヴィルは実際に捕鯨船員として捕鯨に従事したことがあり、その経験を元に捕鯨船における作業や人間関係が詳細に生き生きと書かれている。さらには、メルヴィルはこの作品の執筆に当たり、鯨に関して記載しているあらゆる書物を調べており、「鯨学」と呼ばれる鯨に関する背景知識を説明する章がページ数にして1/4から1/3を占めるのではないだろうか。このような本書の特徴を表すのに「知的ごった煮」という言葉が使われている。まさにその通りだと思う。

物語としても、非常に力のある言葉で乗組員たちが描写されており、特に終盤のモビー・ディックとの対面に向かう各章は読みごたえがあった。それに加えて、この本は文化的な側面で非常に面白い。19世紀の捕鯨船の様子がこれだけ克明に書かれているというだけでも貴重な資料だし、現在は個体数の減少により禁止されている商業捕鯨が当時どのような社会的背景で行われていたか、現代と比較して見るのも興味深い。

メルヴィルは作家であり、元捕鯨船員でありながら、非常に科学的・論理的思考に長けていたようで、当時の知識でどのように鯨が科学的に述べられているか見るのも面白かった。一例として「鯨は哺乳類か、それとも魚か」と議論する章がある。ダーウィンによる「種の起源」が出版されたのが1859年なので、この本はそれ以前に書かれており、当然メルヴィルの科学観の根底にもキリスト教的世界観がある。科学的思考の進んだ先にはもちろんキリスト教的世界観と矛盾する点が生じてくるはずなのだが、メルヴィルはそれら2者のちょうど狭間で上手く「鯨学」を語っている。非常に興味深い。

白鯨 上 (岩波文庫)白鯨 上 (岩波文庫)
(2004/08/19)
ハーマン・メルヴィル

商品詳細を見る


白鯨 中 (岩波文庫)白鯨 中 (岩波文庫)
(2004/10/15)
ハーマン・メルヴィル

商品詳細を見る


白鯨 下 (岩波文庫 赤 308-3)白鯨 下 (岩波文庫 赤 308-3)
(2004/12/16)
ハーマン・メルヴィル

商品詳細を見る


スポンサーサイト

« STAP論文の疑惑に関するネイチャーの記事(2/17)の全訳|Top|STAP細胞懐疑派の声 »

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://tokyocicada.blog.fc2.com/tb.php/60-e11b4276

Top

HOME

あぴと

Author: あぴと
生命科学の研究者。ポスドク。東京という街が好きです。
興味のあること:
生命科学、基礎医学、進化生物学、英語、読書、美術、音楽

Twitter始めました



mail: tokyocicada☆outlook.jp

学振関連記事のまとめ


にほんブログ村

この人とブロともになる

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。