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STAP論文の疑惑に関するネイチャーの記事(2/17)の全訳

2月17日付けで科学誌Natureのウェブサイトに掲載された、STAP細胞の論文に生じた疑惑に関する記事。おそらく、この疑惑に対して現在のところ最も情報量が多く、新しい事実も書かれていた。この問題に関しては興味を持っている人が多数いるようなので、全部訳してみた。

元の記事
Acid-bath stem-cell study under investigation

以下訳_______________________________

酸浴による幹細胞研究に対する調査

日本の研究機関は不正の告発を受け、話題沸騰の論文に対する調査を開始した。


日本の代表的研究機関は、幹細胞研究の草分け的研究に対する懸念が持ち上がったことを受け、調査を立ち上げた。

神戸に位置する理研(理化学研究所)は、同研究所で働く生物学者小保方晴子氏の仕事に対して持ち上がった不正疑惑について調べていると金曜日に発表した。彼女は先月ネイチャーに発表された2本の論文 ー 成熟した体細胞に酸や細胞膜に対する物理的刺激を与えることで、未成熟な状態にリプログラムする簡単な方法を示した論文 ー の筆頭著者として名声を得た。理研はブログサイトに報告された小保方氏の論文における複製画像の使用や、多数の再現実験失敗を認識している。

未成熟な状態の細胞は体を構成する様々な種類の細胞に分化することができるので、患者特有の細胞を作るための理想的な供給源になると考えられている。それらは病気の発生や薬効評価の研究に使用でき、さらには機能不全を起こした臓器再生のために移植できるかもしれない。成熟した細胞をリプログラミングするための、首尾一貫した直接的な道筋は2006年の仕事で最初に示された。その仕事では4つの遺伝子の導入により、成熟した細胞を未成熟な状態にリプログラミングできることが示され、それらはiPS細胞として知られている。しかしながら、遺伝子導入は細胞の安全性に不確定性をもたらす可能性があり、至ってシンプルにリプログラミングを行えることを示した小保方氏の発表は賞賛を受け、同時に懐疑的な人も幾分か生じさせた。

先週バブピア(PubPeer)などのブログが、ネイチャーに出た2つの論文と2011年に出た以前の論文(成人の組織に幹細胞が存在する可能性を示した論文)における問題を報じ始めたことで、懐疑の念はさらに深くなった。小保方氏が筆頭著者である2011年の論文では、とある幹細胞マーカーの存在を証明するバンドを示した図が反転させられた後に、別の幹細胞マーカーの存在を示す図に転用されていた。その画像の一部分はさらに別の幹細胞マーカーを示す図にも使われていた。同論文には他にも明らかな複製画像がある。

その仕事の責任著者であるハーバード大学医学部の麻酔科医チャールズ・バカンティはネイチャーに対し、先週になっていくつかの"画像の混同"を知ったと話した。彼は既にジャーナルに連絡し、訂正を申請している。「それは確実にうっかりミスだったようで、他のテータや結論、もしくは論文のその他の構成要素に影響をあたえるようなものではない」とバカンティは話す。

最近ネイチャーに発表された2本の小保方氏が責任著者である論文(バカンティは両論文の共著者であり、片方の責任著者である)における問題もまた画像に関係する。一方の論文では遺伝子解析の結果を記した最初の図の中の一部の図が切り接ぎされているようだ。もう一方の論文では、別々の実験の図として使われている2つの胎盤の画像が極めて似通っているように見える。

山梨県に位置する山梨大学に在籍し、クローニングのスペシャリストである若山照彦は、両論文の共著者であり、胎盤の写真のほとんどを撮影した。彼は2つの画像が似通っていることを認めた上で、たぶん単純な混同であろうと話す。若山氏は論文の作成中に理研から在籍を移しており、百枚以上の画像を小保方氏に送ったので、どれを使うべきか混乱したのだろうと語る。彼は現在問題を調査中だと話した。

小保方氏の最新の実験結果の再現が困難なことも懐疑の念を増強させた。ネイチャーのアンケートに回答した10人の著名な幹細胞研究者のうち、誰一人として再現に成功していない。幹細胞研究分野の研究者から実験結果報告を募集しているブログでは、8件の失敗が報告されている。しかし、これらの試みの多くは小保方氏が使用した細胞種を使っていない。

一部の研究者はまだ問題視をしていない。北京の動物学研究所に在籍し、クローニングの専門家であるQi Zhouは、酸処理後にほとんどのマウスの細胞は死んでしまったと話す。「実験系の構築はコツがいるんだ。経験豊富な研究室にとっては簡単な実験でも、部外者にとっては極端に難しくなることがあるから、我々の研究室の技術による再現性を元にして発見が本当かどうかはコメントしないよ」とZhouは語る。

イスラエルのレホボトに位置するワイツマン科学研究所の幹細胞生物学者、ヤコブ・ハンナは「新しい発見をふいにしないように注意深くならなければいけない」と話す。一方で彼は発見に対して「かなり懸念を持っていて、懐疑的」だ。彼は諦める前に約2ヶ月間は挑戦することを計画している。

プロトコールが単に複雑なのかもしれない。というのは、若山氏でさえも実験結果の再現に苦労しているからだ。彼と彼の研究室の学生は論文発表の前に、小保方氏からよく指導を受けたこともあり、独立して実験の再現に成功していた。しかし、彼が山梨に移ってからは一度も運に恵まれていない。「単に酸を加えるとだけ聞くと、簡単な技術なように思えるけれども、そんなに簡単じゃないんだ」と彼は話した。

若山氏は、彼が独立して小保方氏の実験結果の再現に成功したことから、この技術が本当であることを確信している。彼はさらに、新たに受精した胚を除き、小保方氏によって作られた細胞が胎盤などの組織を形成できる唯一のものであることから、細胞が別のものに置き換えられていた可能性はありえないと念を押した。「私が自分で実験して見つけたんだ。実験結果は絶対に真実だ」と彼は話す。

何人かの科学者は著者らにより詳細なプロトコールを求めて連絡を取っているが、返事は得られていない。北京大学の幹細胞生物学者であるHongkui Dengは、「すぐに詳細なプロトコールを発表する」と言われたと語る。バカンティは問題なく実験を再現できるとし、小保方氏に"混乱を招きかねない変動を避けるために"プロトコールを発表させるようだ。

小保方氏はネイチャーのニュースチームからの質問に答えていない。

雑誌ネイチャーを出版するネイチャーパブリッシンググループの代表者は、「ネイチャーも事態を認識しており、調査中だ」と語った。

訳終わり_______________________________


STAP細胞を報告した2つの論文の画像に不自然な点が見つかり、再び世間を騒がせ始めたのが先週のことだ。見つかった不自然な画像は、論文の発見について一から覆すような性質のもではないが、特に胎盤画像の類似などは論文の信用を落とすのに十分な"不自然さ"なので、STAPの存在に懐疑的な見方をする人が国内でも増えていた。さらに、追試の報告サイトで多くの報告がSTAP細胞の作製に失敗していることが事態に追い打ちをかけていた(2月18日現在、STAP細胞作製の成功を示唆する報告が一報だけある)。

あらためてNatureのこの記事をじっくり読んでみると、どうやらSTAP細胞作製のためには相当のコツがいるようだ。共著者の若山教授でさえ、現在は実験の再現に苦労しているという事実は驚きだ。STAP細胞は発表当時、簡単に作成できて再生医療に多くのものをもたらす発見として注目されたが、実験が他所で再現できないようでは始まらない。小保方氏らには早急に詳細なプロトコールを公開してもらいたい。

それとは別に、画像の不自然さについては説明が必要だろう。

STAP細胞について気にかけている人(僕も含めて)は、先週から動向を見て一喜一憂しているかもしれないが、この記事の若山先生の話を読んで見ても分かるように、論文のすべてが嘘であったという話は考えづらいと思う。詳細なプロトコールの発表があるのか、それを元に独立した研究室で再現ができるのか、1ヶ月2ヶ月単位で様子を見なければ答えは出ないだろう。

一方で、当初の報道内容に多くの語弊が含まれていたということはおそらく確かで、それはこの件に関してブログを書いている僕も反省しなくてはいけないし、報道機関も反省しなくてはいけないことだと思う。

今後もこの件には注目していきたい。

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